2013年8月29日木曜日

統計学が最強の学問である

「スキル系」でもなく「おもしろネタ系」でもない最強の統計本






統計学の本というと、
「エクセルで分散値の計算」という具合にこういう、「スキル系」の本とか↓







「実は●●と△△には相関がある!」という具合に、「おもしろネタ系」の本など↓







今回紹介する本は、どちらの系統とも違いますね。
強いていうなら、【参考文献】であげた、ナイチンゲールの本に近いかな。




keng.ws browser analytics as of May 31, 2005 / Keng Susumpow





行動するための統計学





「スキル系」の本も「おもしろネタ系」の本も、ただ漫然と計算方法や
分析結果を眺めているだけは、「ふ~ん、それで?」で終わってしまいます。
しかし、本書は、「ふ~ん」で終わらせないよう、


  • 「なぜそんなことをするのか」
  • 「そんな行動は可能なのか」
  • 「やったらなんぼ儲かるのか」


という視点で、読者を具体的に行動を起こさせるように話が展開されていきます。


"この3つの問いに答えられた時点ではじめて「行動を起こすことで利益を向上させる」という見通しが立つのであり、そうでなければわざわざ統計解析に従って新たなアクションを取ろうとする意味はない"

(P59 第3章誤差と因果関係が統計学のキモである)



要は、視点がビジネスチックなんですね~。
学生さんだけでなく、経営者、事務職、現業職、専門職などの職種にとらわれず、
社会の全方向に向けて書いたという感じかな。



【関連エントリ】


統計データはおもしろい!ためになる!



【参考文献】



丸山健夫 ナイチンゲールは統計学者だった!-統計の人物と歴史の物語- 日科技連







2013年8月28日水曜日

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識

つまるところは「出口」の問題





タイトルからして学歴の話とか、大学偏差値の話をするのかと思っていたら、
著者の本当の問題意識は、「入口」である「学校」のほうではなく、
「出口」である「職」の方にあるようです。



本書の「おわりに」でその問題点が、要約して書かれていますので、
「時間はない。でもタイトルは気になる」という人は
P172から読み始めてください。10ページで終わります。



就活
Super Opening Live / Dick Thomas Johnson





「補習の補習機関」は生まれるか!?






個人的に「これは!」と興味深かったのは、大学を「補習の府」にするというところ。


"社会人になったとき、必ず役に立つカリキュラムを大学教育の中に入れてしまう"


(P77 第1章学歴のインフレーション)



「地誌」「ビジネス英語」「簿記」「税務」「価格理論」「マーケティング」
「労働法」「商法・会社法」「特許法」「給与・社会保険・年金計算」
「組織心理」「経営文学(経営を扱った小説など)「商業金融」



などを横断的に教えることを、著者は提案されています。
そのうち、何らかの理由で、大学でこれらの学習ができなかった人のために、
さらに「補習の補習機関」ができるのではないかと、個人的に考えております。



て、いうかそうなってくれたら嬉しい!(特に太字にした科目)



【関連エントリ】


なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?



2013年8月27日火曜日

Webサービスをはじめるためのセキュリティ特集

「お役所」は技術、「犯罪者」は人を見る



セキュリティ特集といっても、管理人自身、まだWebサービスの展開を「企画中」なので、
全くエラそうなことは言えません。最近読みかじったセキュリティ関連の本をちょこっとご紹介。
このブログの記事を見てくださった方の、何かのキッカケになれば幸いです。



ただ、今回取り上げる2冊の本は、情報セキュリティについての
重要性を述べている人の立場と観点が、全く異なります。



情報セキュリティって、「これをやれば絶対安全だ!」なんてことはないと思いますので
違う立場の人が、違う観点から、考えやノウハウを披露することは
結構大切なことなのではないでしょうか?





Networking / ivanx





情報セキュリティ白書2012








書いているのは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)というところなので、
なんとなく「お役所な」ところなんでしょう(少なくとも次に取り上げる本の立場からすると)。



情報セキュリティの概況と分析がのってたり、その不正防止のための取り組みが
のってたりして、どちらかというと技術的な側面が強い印象があります。
もちろん、これ一冊で実務を乗り切れるとは思いませんが。



ただ、SQLインジェクションなどの脆弱性攻撃の例が、載ってたりするところを見ると、
「Webサービスをはじめたいけどセキュリティについて、何をすればいいのか分からん」
というWebサービス初心者の方が、最初の知識を得るには、けっこうおすすめかも。




欺術(ぎじゅつ)-史上最強のハッカーが明かす禁断の技法








独立行政法人を「お役所」というかどうかは、意見が分かれるところだと思いますが、
この本の著者の方と比べたら、IPAは多分、「お役所」なんでしょう。
なんせ、著者のケビン・ミトニックさんは、元・「犯罪者」です。


"「FBIが最も恐れた」史上最強のハッカー。ハッキング行為(ネットワーク犯罪)で、有罪判決を受けた史上最初の人物であり、FBIの「最重要指名手配」を受けた最初の人物でもある"


(著者紹介より)


本書にはハードウェアの技術もソフトウェアの技術も、ほとんど触れられていません。
高額な手数料を支払って、専門技術者にファイヤーウォールの設定をしてもらっても、
それだけでは全く不十分であると説明されています。そんなミトニックさんが、
強調するのは次の3点です。


  • ソーシャルエンジニアリングの内容
  • ソーシャルエンジニアリングの手口を知る
  • 情報セキュリティの最大の弱点は、ハードでもソフトでもなく、



「お役所」元・「犯罪者」では、見るところ強調するところが、ずいぶん違いますね~。
詐欺師の手口を徹底的に知れということですか。



ソーシャルエンジニアリング
知らない人のためにはやらないことをすいすいとやらせてしまう、説得と誘導の技術のこと。




【参考文献】


徳丸 浩
体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 脆弱性が生まれる原理と対策の実践
ソフトバンククリエイティブ











2013年8月26日月曜日

評価と贈与の経済学(徳間ポケット)

「従業員システム」は限界にきている!?







  • メガネ21→メガネ及びコンタクト・補聴器等の販売
  • いすみ鉄道→鉄道による一般運輸業、旅行業、広告業
  • FREEex→主に印税や報酬を得ない執筆活動や講演活動



一見するとこれらは、業種も事業内容もバラバラの会社です。
(3番目の会社が、本書の著者のひとりである岡田斗司夫さんが主催する会社)



ですが、一つ共通していることがあります。
それは、入社するのに「社員」(または入社希望者)がお金を支払う必要があることです。







五井駅 / yellow_bird_woodstock





「社員の利益」と「会社の利益」を一致させる





これらの会社があえて「社員」に金銭的な負担を求めているのは、
従来の「従業員システム」では、「労働者」の利益と「会社」の利益が相反するからでしょう。


"そうすると内田先生が本で書いているとおり、労働者はもっとも多い金をもらって、もっとも少ない労働をしようと考えるし、雇用側はもっとも少ないお金でもっとも多い労働をさせようって考えるに決まってる。時間が経つにつれて、だんだん関係がゆがんでくる"

(P69 第二章 努力と報酬について)



ということで考え出されるのは、「社員」は「労働者」にするのではなく、
「役員(出資者)」にすることですね。「役員(出資者)だったら、
「会社」の利益と本人の利益が一致しやすくなりますね~。



「社員」が「会社」にお金を支払う会社って、なかなか聞きなれないですが、
実はすごく合理的なシステムだと思います。昔みたいに機械をガチャンガチャンと
回していれば、一定の成果が出るという世の中でもなくなってきてますから。






【関連エントリ】


丸見え経営 すべてを見える化すると効率が劇的に高まる!
評価経済社会~ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている




2013年8月21日水曜日

丸見え経営 すべてを見える化すると効率が劇的に高まる!

「役員」と「従業員」のハイブリッド化はブラック企業をなくす






"もはや、わたし(キリスト)はあなたがたを僕(しもべ)と呼ばない。僕は主人が何をしているか知らないからである。わたしはあなたがたを友と呼ぶ。父から聞いたことをすべてあなたがたに知らせるからである"

(新共同訳聖書 ヨハネによる福音書 15章15節)



本書では、頻繁に「社員」という言葉が出てきます。



「社員」というと、「従業員」とか「職員」とかも、言い換えができそうです。
中でも特に、事業主の指揮・命令に属する「労働者」のことを指している
ようなイメージがあります。



しかし、本書で出てくる「社員」とは、どちらかというと会社法で言う、
「出資者」のことを指しているような感じです。その「社員」という言葉を
新約聖書と照らし合わせて言えば、冒頭のように「友」、「僕でない人」ということになるでしょう。


脱社畜ブログ:会社法では「社員」=「株主」





「社員」=「役員(出資者)」≠「労働者」





とすれば、出資の程度に応じて、「社員」はみな「平等」であったり、
経営を丸見えにしたり、必要なお金を「社員」から募ったりするのは、
ごく当然のことになるでしょう。



「労働者」の立場からすると、一見突拍子もないような経営スタイルですが、
本書で登場する、メガネ21のような「丸見え経営」のスタイルは、
株式会社のもっとも原初的な状態を、忠実に再現しているように感じます。




眼鏡
眼鏡新調 / kayakaya





どちらが苦痛か?~他人にコキ使われる8時間とみずから使う16時間





管理人が、本書を読んだのは、これらのブログがきっかけです。



はてな匿名ダイアリー:ベンチャー企業あるあるにハマった。
teruyastarはかく語りき:「従業員」というシステムはもう限界にきている



これらのブログに書いていることをいま日本に存在している
すべての企業に適用することはできないと思います。



しかし、「社員」の「役員(株主)」化が、名実ともにすすめば、
「ブラック企業」なんて言葉は死語になるのではないでしょうか?

人に拘束される8時間よりも自らすすんで行う16時間の方が、生活としてラクですもんね~。




【参考エントリ】


「金持ち父さん」への道~ハイブリッドビジネスパーソン特集




2013年8月20日火曜日

モンスター

『半沢直樹』と比べてどちらが面白いか?







近頃、やられたら「倍返し」で有名な『半沢直樹』が、評判らしいですね。



人気がますます加速する「半沢直樹」ってどこが面白いの?
「やられたらやり返す。倍返しだ!」ドラマ【半沢直樹】の名言が色んな場面で使われてる


外資系銀行に勤務した経験があるこの方に言わせると、
『半沢直樹』の面白さは、組織内の序列をかけたプライドにあるということらしい。




三井住友銀行
三井住友銀行 / ehnmark






『プライド攻防戦』と『セックス攻防戦』





カネでは差がつかないので、組織内の序列でせめぎ合う。昔からの日本人の習性でしょうか。
だからこそ『半沢直樹』が、「面白い」と言われているのかもしれません。
ただ「面白い」と言えば、本書の『モンスター 』も『半沢直樹』と遜色がないぐらい「面白い」です。




なぜなら、『半沢直樹』は日本人独特の面白さにある一方で、
モンスター 』の面白さは、人間であれば、必ず持っている女と男の
「美醜をめぐるセックス攻防戦」であるからです。





縦軸に生活水準を取ると分かりやすくなるかも…






銀行員のプライドと女性の美容整形は、どちらが良いか?
ということなど、それぞれの主観によって左右されるので、比較はできません。



しかし、あえて分かりやすく生活水準を基準にして両者を比較すると、
モンスター 』の美容整形の方が、圧倒的に分かりやすいです。
作図で比較するとこんな感じでしょうか。



『半沢直樹』のプライドと生活水準の関係







『半沢直樹』が「倍返し」をして、銀行員としてのプライドを満たしても、
最初のうち、生活水準は改善するが、そのうち頭打ちになる。



『モンスター』の美容整形と生活水準の関係






モンスター 』が美容整形をすると、S字カーブのように、
生活水準が劇的に改善する。



”女性器を整形してから、あそこをじっくり見る客が増えた。中には「きれいだね」という客もいた。私はその言葉を聞きながら、ここでもやっぱり最後は「美」なのかと思った。(中略)私の稼ぎは月に三百万円以上になった。"


(P235 十.美の黄金比)



【参考文献】


池井戸潤 オレたちバブル入行組(Kindle版)










2013年8月19日月曜日

100歳、ずっと必要とされる人 ――現役100歳サラリーマンの幸せな生き方

需要と供給が一致する現役最古の100歳サラリーマン







昨日、当ブログで、こんな記事を書きました。
じゃあどう働けばいいんですか?2・26事件を知る現役最古のサラリーマンに学ぶ!



「100歳サラリーマン」というだけでも、タイトルに値しますが、
なぜ福井福太郎さんは、世間から一定の「評価」を受けるのでしょうか?





Tokaido line
Tokaido line with 120th headmark / woinary





福太郎さん働ける「他の理由」




  • 序章 辻堂から神田まで、僕の毎日。
  • 第1章 昔えらかったとか、えらくなかったとか、どうでもいいことなんです。
  • 第2章 100歳まで働けるなんて、ありがたいよ。
  • 第3章 働き続けるのは、それが本能だからだよ

(という感じで飄々とした感じの見出しがあと6つ続く)



これらの見出しを見ているだけでも、「なるほどな!」と思ったりしますが、
福太郎さんが 「評価」を受けるのは、飄々とした性格以外にもあるような気がします。




「割高給料のジョブ」はしていない福太郎さん





個人的には、福太郎さんが「評価」を受けている理由は、
年功序列・終身雇用のラインから、すっかり外れて、
割高な給料はもらっていないからだと思います。



給料の額こそ書かれていませんが、福太郎さんによる労働供給と
勤め先の会社の労働需要が、見事に一致しているような感じです。
言い換えると、福太郎さんの生産性が、支払われる給料と合致しているんでしょう。


"9時半頃に会社に着くと、同僚の皆さんと宝くじの仕事をして、お昼を食べてからまた少し仕事をして、午後1時半ごろには会社を出ることにしています。"
(P21 序章)

"ですから、96歳ぐらいの時に、いい加減にもう歳を取りすぎたから、会社を辞めようと思ったこともあるんです。でも退職を申し出たら、親友の未亡人でもある今の会社のオーナーが「ずっといてほしい。福井さんが会社に来てくれるだけでいい」と言ってくださったので、その言葉に甘えて働かせていただいている、というわけなのです"

(P22 序章)



年功序列の賃金制度をなくなっててしまえば、需要と供給で決まる
柔軟的な労働市場が発達して、多様な働き方ができるのではないでしょうか?




【関連エントリ】


じゃあどう働けばいいんですか?2・26事件を知る現役最古のサラリーマンに学ぶ!






2013年8月16日金曜日

じゃあどう働けばいいんですか?2・26事件を知る現役最古の100歳サラリーマンに学ぶ!

年功型賃金制度・終身雇用の終焉



昨日、東洋経済オンラインとコラボ(リンク)してこんな記事を書いてみました。
(といっても管理人が、一方的にやっただけだが(笑))


高学歴の象徴である、博士の世界でも、医師の業界でも、「上」が詰まりまくっていて
40代ぐらいから下の層は、空中分解寸前で「やってられまへんがな」という感じらしい。




Laboratory / Army Medicine





7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想(PHP新書)








「どうしてそうなるんだ?」と原因を知りたければ、コチラの本が良いかも。
要は、年功序列・終身雇用が「建前」の雇用慣行が、「逆機能」しまくっていることが、
詳細に述べられています。(著者の城繁幸さんのブログ→Joe's Labo) 



日本の年功序列型賃金は、「ラジアの年功賃金モデル」とも言われます。
40歳くらいを起点にして、それより若い世代は、生産性を下回る賃金を受け取り、
それよりも高い世代は、生産性を上回る賃金を受け取ることになります。



作図で説明すればこんなイメージ↓



ラジアの年功型賃金モデル







100歳、ずっと必要とされる人 現役100才サラリーマンの幸せな生き方









「原因はどっちでもいい。これからどうすればいいんだ!」という人には、
こっちの本がおススメ!



といっても何かスゴイ解決法がのっているわけでもなく、
ノーベル経済学賞が取れそうな、ありがたい理論が知れるわけでもありません。



福井福太郎さんが49歳でサラリーマンとして初めて勤め出して、
その後、51年間勤めたうんちくが、淡々と語られているだけです。



もっとも、城さんのブログでも語られているように、福井さんの、
カネにも出世にもこだわらない生き方は、読んでいていて小気味が良かったりします。
もちろん福井さんは、年功序列・終身雇用のラインから、完全に外れているようです。



そもそも年功序列・終身雇用の制度なんて、たかだか1940年ぐらいに戦争遂行のために、
たまたまできた
もんで、それ以前は勤め人は、ほとんどは日給制



あの松下幸之助も自分で会社をやる前は、かなり有能な職工だったらしいですが、
それでも当時の給料は日給制。100年前から生きている人の言葉と思えば、
「ははあ、なるほど~」と、妙に説得力を感じてしまいします。




【参考文献】


野口悠紀雄 1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済 東洋経済新報社