2013年10月29日火曜日

累犯障害者

刑務所は「究極の福祉施設」なのか?








「福祉の網からもれ、貧困のあまり、おにぎり1個を盗んだ
知的障害者を刑務所に送るべきかどうか?」



著者からかなりヘビーな問いを出されたが、何も思いつくことはできなかった。
考えられない世界だし、考えたくもない世界でした。





Prison cell / decade_null




しかし、現状のところ犯罪を起こして、身元保証人がいない知的障害者にとって、
矯正施設であるはずの刑務所が、「最後の福祉施設」となっていることがよく分かりました。


  • 法曹(裁判官・検察官・弁護士)
  • 矯正(刑務官・保護司)
  • 福祉(障害者福祉行政)


のそれぞれが個人単位では「おかしい」と思っているに、
身動きが取れない状態になっている。



この中でも特に矯正や出所後の世話をしている、刑務官・保護司が最も矛盾を
感じているような気がします。1年間に受刑者1人当たり200数十万円も
使っている意味があるのかと。



社会システムの「穴」にはまってしまい、誰も注目しない「累犯障害者」にスポットライトを
当てたこと自体に、本書の価値があると思います。




【関連エントリ】


刑務所なう。シーズン2 前歯が抜けたぜぇ。ワイルドだろぉ?の巻



2013年10月28日月曜日

サーバーのOSはどうする?ネットワークの基礎知識は?

Webサービスのバックエンドについて



「Webサービスをやる!」というとどうしても、サービスの前面について目がいきがちです。
プログラムとかWebサイトとか。でもそれらのプログラムを実行したり、Webサイトの表示、
サービスの実施には、「サーバーやネットワークの知識が必要なはず!」



と思って、素人には敷居が高そうな難解な専門用語が飛び交う中、
「まだこれならいけるんちゃうか?」と思って読んだ本をご紹介します。
(それでも読みながらかなり寝落ちしたが…)




Windows Home Server Rebuild / robertstinnett





これならわかる!Linux入門講座








まずはサーバーを動かすための基本OSの知識が必要。
そのOSとしてLinuxの基本操作について、未経験者用に説明。


先生と生徒の会話形式で進んでいくので、
手元にぶっ壊れてもいいような安価なPCを目の前に置いて、
操作しながら読み進めていくと、つまることろは、全くありませんでした。



ただし、Linuxの基本操作の説明に徹しているため、
お手持ちのPCをLinuxサーバーとしてネットワーク機器にしようと思うと、
別の本が必要になると思います。




改訂新版 3分間ネットワーク基礎講座








いまさらですが、Webサービスで顧客と情報のやり取りしていることを、
突き詰めていくと、最後は電気でデータ通信をしていることになります。
その通信は、次の7つの層に分かれています(OSI参照モデル)


  • 第7層 アプリケーション層(ユーザーにネットワークサービスを提供する)
  • 第6層 プレゼンテーション層(データの形式を決定する)
  • 第5層 セッション層(データのやり取りの順位を決定する)
  • 第4層 トランスポート層(信頼性の高い伝送を行う)
  • 第3層 ネットワーク層(伝送ルートや宛先の決定を行う)
  • 第2層 データリンク層(隣接機器へのデータの伝送を制御する)
  • 第1層 物理層(電気・機械的な部分の伝送を行う)


フルスタックのWebサービス事業者が直接作業するのは、
このうち第4層から上の層だと思います(多分)が、
本書でメインとしているのは、第1層から第3層について。



第3層にはIPアドレスとかの話も出てくるから、Webサービス事業者が、
一般教養的に読んでおくのも良いかと思います。



〔追記〕
この記事の公開後、記事を見てくださったから、7階層よりも多く、
11階層で説明している例もあると、聞きました。11階層で説明している
本に出会ったときは、注意して読んでみます。



【参考文献】


これならわかる!Linuxサーバー入門講座






3分間DNS基礎講座










2013年10月23日水曜日

実践 日本人の英語

所有とか変化とか時制など日本人が気付きにくい点





まだ全部読んでません。
でも高校卒業以来、英語の学習をしたことがない、管理人からすれば、
身につまされる話が多いので、気になったところを書き留めておきます。





Counting in English / IDVMedia



「の」の連発




【日本語例文】

「先日の実験において、パナソニック社の携帯電話の性能の12.5%の向上を確認した」


【ありがちな誤訳】

"an inprovement of 12.5% of the perfromance of the cell phone of Pernasonic"

【おすすめの英訳】

"an inprovement of 12.5% in the Pernasonic cell phone's perfromance "


【ポイント】

"in"は「変化」を示す。"'s"は読みやすさに配慮した慣用表現。




動詞のギャップと時制の問題





【日本語話者が書くありがちな例文】

"After I graduate, I enter a bank."

【正しい訳】

「私は卒業してから一軒の銀行に入る習慣がある」


【ポイント】

日本語話者は、「私は卒業後、銀行に入社する」との意図で書いているつもりだが、
そうなっていない。そのように表したいのなら、以下のようになる。

"After I graduate, I will start working for  be employed by a bank."

これから繰り返してすることや習慣的にすることを示すについて、
未来形ではなく、現在形でのみ表そうとそうとしたことで、
とんちんかんな英文ができてしまった。



【参考文献】


日本人の英語 (岩波新書)






2013年10月22日火曜日

世の中に新しい価値をつくる教室 schoo WEB-campus編

「schoo WEB-campus」からの発想法について



ki



schoo WEB-campus


自分でWebサービスを編み出したいと思って読んでいると、
いくつか「腹落ち」するところがあったので、書き留めておこうと思います。




UW Architectural Commission, Model of the new School of Business, University of Washington, Seattle, USA / Wonderlane





アイデアに価値はない~Why,How,Whatの視点





アイデアを「考えてる」だけなら、誰でも考えているでしょう。
自分がそのアイデアを思いついたときには、同じことを考えてしまっている人が
500人とも、10万人ともいるかもしれません。


もっとも重要なことは、そのアイデアを実行すること。この重要な視点が次の3つ。
割とよく聞くフレーズです。


  • Why = なぜやるのか
  • How = どのようにするのか
  • What= 何をするのか



アイデアに価値はない~Will,Can,Mustの視点





ですが、本書で登場するnanapiの代表取締役でもある古川健介先生は、
この発想をする前にではなく、次のような発想をすることをおススメされています。


  • Will= やりたいこと
  • Can = できること
  • Must= やらなければならないこと


これを今の自分に当てはめると次のようになるかな。


  • Will= Web上で自学自習環境のサービスを提供したい
  • Can = 静的なWebサイトぐらいなら作れる
  • Must= 動的なWebサイトを作れるようにプログラミングの勉強。あとおカネの調達とか。


3つの中でMustの分量が最も多いのが、少し気になりますが、
この発想法、ピッタリ来たわ。Why,How,Whatだと、大上段に構えなくてもよいので、
使い勝手が良いかと思います。










2013年10月21日月曜日

統合失調症がやってきた

精神疾患の発症とその後の過ごし方について







ハウス加賀谷さんは、統合失調症という精神疾患のため、芸人でありたい
という望みを一時絶たれていました。それでも加賀谷さんは、病状を寛解させ、
芸人に復帰できました。なぜか?ポイントは3つあると思います。



もちろん、管理人は精神疾患を発症したすべての人が、「元に戻る」ことが良いと
すすめているわけではありません。精神疾患が発症したの後の生き方の1つとして
参考になると思います。










寛解のために心がけること






1.困っていることははっきり言う。次の行動につながる。


"これ(抗精神病薬の長期服用によって起こる舌の不随意運動)も仕方のないことなんだ。そう諦めかけていたぼくに、状態をきちんと説明してくれたのはO先生だった。「先生、ぼくの舌が、勝手にレロレロと震えるんです」信頼できる先生であると分かると、ぼくは、O先生に何でも話すようになっていた。「この副作用が出ちゃうと、完治は約束ができないんだよ。まあ良くなるように頑張るよ」正直に話してくれるO先生、ぼくはその言葉だけで安心できた"

(P158)



2.「こうありたいと」と思うものを自分でイメージし、そのための作業を具体的にこなす。


"食べて寝ての毎日で、体重は105キロにまで増加していた。芸人に戻るには、まず痩せることろから始めよう(中略)歩くことを勧められたぼくは、その日のうちにシューズを買いに行った。"

(P174)

"友人の紹介で始めたんですけど、(アパレル関係の仕事)はぼくの性格に合っていました。黙々と1人で値札に値段のスタンプを打ったり、簡単なアクセサリーを作ったり。地味な作業だけど、適性があったんでしょうね。"

(P201)


3.医師と決めた薬の処方量は必ず守る。できなければ「地獄」をさまようことになる


"「調子がいいからこれ2錠でいいや」「眠れないからこれ3錠に、これ1錠プラスして…」主治医が処方してくれた薬の分量を守らず、自己判断で、気分に応じて飲む。少なすぎることもあれば、死にたいのかというくらい多すぎることもある。ぼくのしていたことは、きつい言葉を使うと、薬物乱用」だ"

(P119)




PhoTones Works #384 / PhoTones_TAKUMA





精神疾患をもつ当事者でも関係者でもおすすめの1冊






統合失調症だけでなく、うつ病躁うつ病(双極性障害)は、その辛さは、
当事者になってみないと分からないことが多く、セルフコントロールが欠かせないと思います。



加賀谷さんの闘病記を読んでいると、「なるほど納得!」というところもあれば、
「それはあかんやろ~」と反面教師にするところもあり、当事者の人にとっても
家族・知人などの周りの関係者にとっても、含蓄の深い1冊となるでしょう。



【参考文献】


悩む力







2013年10月16日水曜日

IT人材白書2013 強みを活かし多様化の波に乗れ~グローバルIT人材、WEB人材に求められるスキルとは~

2010年から2020年にかけて約5倍の成長!






今の日本でこれから、


  • 「どんな産業が伸びるんだろう?」
  • 「どんな人材ならたくさん必要とされるのだろう?」


と素朴な疑問を思って、図書館から取り寄せて読んでみました。
そしたら、「WEB企業とWEB人材の動向」ということで、
わざわざ章立てにして、Webビジネスから見た産業と人材についてのレポートが。



なお、本書ではWebビジネスを、「顧客に対するサービスやサービスを提供する
手段としてインターネット(Web)およびインターネット(Web)関連技術を
用いているビジネス」と定義されています。





Google+検索が出来るようになりました #google+ / amadeusrecord





下請けはあまりしない・採用数は不足しがち・要プログラミング力…





以下では、Web企業の特徴について、いくつか気になるところがあったので、
書き留めておきます。




  • Webビジネスは2010年時点では約10兆円の市場規模であるが、2020年には約47兆円にまで成長すると推計(P250)



  • Web企業とは取引対象を個人・法人に分ければ、「B to C」企業と「B to B」企業に分けられる(P251)



  • 「B to C」企業の開発体制の特徴→システムはほとんど内製(そもそも世の中にノウハウが存在していないため)(P254)



  • 「B to B」企業の開発体制の特徴→企画・設計の業務は自社でするが、制作・実装業務は外注(P254)



  • 採用数について新卒採用、中途採用いずれも目標水準に届かず、人材確保に苦労している(P260)



  • Web企業では、IT企業よりも「プログラミング力」を、求めている割合が高い(P262)




この文章を書き連ねていると、思わず「今の世の中、どこが不景気やねん!」って、
ツッコミを入れたくなります(笑)







2013年10月15日火曜日

江戸のお金の物語

「江戸時代とおカネ」のお題で小話が満載






江戸時代のおカネは、今とは違います。
そもそも「身分によって通用する貨幣の種類」が違います。


  • 現在→すべての人が紙幣、硬貨
  • 江戸時代→武士(金貨)、大店の商人(銀貨)、庶民(銭貨)



そして「数え方」も違います。


  • 現在→すべて十進法
  • 江戸時代→四進法(一両以下の金貨・銀貨)、十進法(一両以上の金貨、銭貨)



さらに「計り方」も違います。


  • 現在→すべて計数貨幣
  • 江戸時代→計数貨幣(金貨、銀貨、銭貨)、秤量貨幣(銀貨)




Bye ... / wallygrom





おカネを使ったらしょっぴかれる!?






というわけで、江戸時代ではおカネって、結構複雑です。
「ただ持っていればいい」とか、「誰でも使ってもいい」というわけでなかったらしい。
裏店に住む「はっつぁん、熊公」が、何の前触れもなく、小判を使うと、



零細商人→一般商人→両替商→奉行所



というルートで足がついて、たちまちしょっぴかれることもあったとか。
そうかといって、普段使いの銭貨にかえると、かなりの手数料が差し引かれたよう。



そういうわけで、庶民が「ねずみ小僧」などの義賊に、大商人から盗んだ小判を
ばらまいてもらっても、実は大して嬉しくなかった理由などを、当時の社会の仕組みから、
説明されていて大変面白かったです。




まだまだあるぞ!「江戸時代とおカネ」について






他にも、貨幣そのものことだけでなく、貨幣を通じた江戸幕府の経済支配体制、
高度に発達した江戸期の市場経済、庶民や武士の暮らしぶりなども、書かれています



日本史に興味がある人はもちろんのこと、「おカネ」とか「生活と暮らし」に
興味がある人が読んでも、おもしろいんじゃないでしょうか?
下にあげた参考文献と合わせて読むと、一層、本書が引き立てられるでしょう。





【参考文献】


江戸の卵は1個400円! モノの値段で知る江戸の暮らし (光文社新書)





歴史が教えるマネーの理論









2013年10月14日月曜日

脱社畜の働き方 会社に支配されない34の思考法

「失敗」とか「成功」とかにとらわれない思考法






著者である日野さんの、「脱社畜ブログ」は、記事が更新されるたびに、
読ませていただいています。個人的にブログをカテゴライズさせてもらうと、
ざっくりと次の3つに分けられると思います。


  1. 日本の雇用慣行
  2. 日本人の労働観
  3. その他(起業・大学生活など)


このうち1.と2.は、ブログも本(特に1章・2章)もだいたい同じです。
どちらかを読んでいれば、どちらかは、「速読」ができると思います。




the commute / Chris_J





日野さんが失ったもの→「ほとんどなし」





脱社畜ブログのほとんどに目を通してしまった方にとっては、3章から読むことがおススメです。
こちらには、日野さんが学生時代に開発していた、Webサービスや
ソーシャルゲームの内容が、具体的に書かれています。



といっても、すべて失敗の記録です。「コレやって大当たりしました!」、
というものではありません。しかし、読んでいてつくづく感じるのは、



「失敗したからといって、失うものってほとんどあらへんよな~」



ということ。強いて言うなら、日野さんが失ったものって、時間くらい?




成功しなくてもできる「プライベートプロジェクト」






従来の「商売」とか「ビジネス」といえば、例え小さい規模と言えど、



  • 融資か自己資金で、
  • 販売権を購入して
  • 店舗を確保して、
  • 在庫を抱いて、
  • 労働力を確保して…



という感じで、リアルにヒト・モノ・カネが動き、
これらが滞留すると、「アウト」で敗者復活が困難な状態になります。



しかし、日野さんも後半の章で触れている、「プライベートプロジェクトのすすめ」では、
これらの「重い条件」は、ほとんどありません。



って書くと、何か怪しい情報商材の販売のように聞こえるかもしれませんが、
管理人は、そんなこと全く感じませんでした。



なぜなら、本当に「タダ」もしくは「タダ同然の価格」で商売を始められる素材が、
Web上に転がっていて、日野さんは、それらを紹介しているだけだからです。



「脱社畜?なにそれ~?そんなんできんの~?」と感じている方でも、
本書を読むと「説得された…」というより、「納得した!」という感じになれると思いますよ。




【関連エントリ】


未来の働き方を考えよう 人生は2回生きられる
働くことがイヤな人のための本
ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法










2013年10月9日水曜日

なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか(働く・仕事を考えるシリーズ)

ビンボー克服のための手段が機能不全に







タイトルを見ると「なぜ給料が上がらないか」となっています。
結論から申し上げると、「賃金の上方硬直性」があるからです。もっと簡単に言えば、
「一度給料が上がってしまえば下げられない」からです。



それでは、なぜ下げられないかというと、裁判所に「不利益変更法理」(P25)
という判断基準があり、賃金変更のための「高度の必要性」と、
「合理性」が厳しすぎるからだそうです。



賃金
My first salary / radiant guy





大量消費・大量生産・賃金の上昇





じゃあ、その「高度の必要性」と「合理性」って何なの?
って突っ込んでいくとだんだんディープな法律論になっていきそうで
これ以上記事を書く自信がありません。



そこでおちゃらけミクロ経済学を運営している管理人らしく、
経済学の見地から「「賃金の上方硬直性」が発生する理由を考えていきましょう。
簡単に言えば、こういうサイクルの中が、社会全体に発生していたと考えられます。



1.戦後モノがなかった。みんなビンボー

2.貧乏を克服するために大量のモノが必要

3.大量生産のための労働力が必要

4.大量の労働力が特化の利益を発揮

5.規模の経済を発揮、生産費用が低下

6.労働への報酬分配率が高くなる



おかげでめでたく日本の戦後社会はビンボーを克服することができました!
(少なくとも物質的には)しかし残念ながら、現在の日本で、このサイクルを
当てはめようとすると、かなり厳しいなぁ。




「賃金の上方硬直性」から「賃金の上下柔軟性」へ





本書を読んでいると、よく「高度成長は~だった」という形で、現在の労務と、
1947年に出来上がった労働基準法がいかに合わないかが、紹介されています。



しかし、この本読んだ自分より若い人が、
「高度経済成長期の遺物だから今の労働基準法はアカン!」
と単純な思考に陥ってしまうのも、アレかなと思い書いてみました。
(そんなことを書いている管理人も30代で、そんなにエラそうなことも言えんのですが)



「賃金の上方硬直性」も法律がどうたらこうたらという以前に、
生活上の必要性や必然性があって登場したものなんで、
そのうち、「賃金の上下柔軟性」なるものも、経済的に出来上がってくるような気がします



【参考文献】


 向井 蘭 社長は労働法をこう使え! ダイヤモンド