2013年11月4日月曜日

バガボンド(36) (モーニングKC)

要するに「傷を舐め合うな!」ということ







井上先生が、キャラクターに語らせるセリフは、何か時代や立場を超えて
どこでも通用するもが多いように思います。


"強くなろうとあがく者が一人でもいると何もしない自分がみじめだもんな。みんな同じなら見えないのに異質なものがいると浮かび上がってしまう。自分のみじめさが。だから追い出そうとしてそれができないと分かると嘲笑い下に見て線引きして隔てる。それでまたじぶんを見ずにすむ"

(P17)



見ず知らずの不毛の土地で、一人開墾を続けている宮本武蔵
地元の百姓から、「目障りだ、出ていってくれ」といわれ、
そばにいた伊織(宮本伊織)が思わず、亡父から言われた言葉を思い出し述べたセリフです。





田植えの前 / FooNar




お笑い芸人が体験した「傷の舐め合い」とは?





これだけ読むと、「まあそんなものか」と思ってしまいますが、
最近読んだ、お笑い芸人の石井てる美さんが書いた、
私がマッキンゼーを辞めた理由 でも言葉をかえて、
同じ考えが述べられていたので、同じく引用してみます。


”そのうち、そういう人たち(お笑い芸人になったことについて心配するフリをする人たち)はお互いに"自己防衛"をしているのだと分かりました。それまで同じ秩序の中で生きてきたはずの私が、その世界の価値観を壊すような決断をするものだから、私の決断を否定して、自分たちの居場所を肯定することで、安全確認をし合うのです。"

(P173)




武芸者もお笑い芸人も感じることは同じ






宮本武蔵は、剣術指南役として大藩に召し抱えられてもおかしくない身分。
なのに今は土のこともよく知らない素人百姓。



石井てる美さんは、東大→東大大学院→マッキンゼー
というコースを歩んだ日本有数のエリート。
なのに今はバイトで収入を補う一介のお笑い芸人



武蔵も石井さんも、時も場所も違うはずなのに、なぜか同じようなことを言っています。
井上雄彦先生が語る世界観は、本当に普遍性があるなと思わずにはいられません。




【参考文献】


私がマッキンゼーを辞めた理由 ―自分の人生を切り拓く決断力― (ノンフィクション単行本)







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