2013年5月31日金曜日

学校を変えれば日本は変わる 強い国・日本は公立改革で生み出す

教育のICT(情報通信技術)とデジタル教科書について







管理人は、現在、Web上で社会人向けの通信添削サービスをできないか、
考えております。そのため、教材のネタとなる「ミクロ経済学」や、
インフラとなる「コンピュータ・ネットワーク」に関する技術を読み漁っています。



さらに最近では、それらにプラスして、「教育関係」の本についても、読み始めています。
教育関係の本を読むのは、いくつか目的があります。


  1. 教育産業は国内でどれぐらい市場規模があるか?
  2. 社会人のための通信添削サービスとしてどのような競争相手がいるか?
  3. オンラインの教育サービスに向いた教え方は、何か?(選択式、計算ドリルなど)





PowerPoint Karaoke / rmlowe




オンラインの教育サービスに向いた教え方





特に、3番目のオンラインの教育サービスに向いた教え方について、
ほんとうにいいの?デジタル教科書で書いたものと、重なるものがいくつかあります。
それらは、おそらくサービスの開発上、欠かせないものだと思いますので、書き留めておきます。


  • 横浜市教育委員会でネット上でのドリル問題を開発(P177)
  • 読み書き計算が、指で操作するiPadが向いているかどうか議論の余地がある(P178)
  • 板書はパワポで代替できる。浮いた時間は、先生の説明と生徒がノートにまとめることにあてる(P183)



管理人が目指しているのは、論述式問題に対する通信添削サービスなので、
そのサービスと教育のデジタル化が、どう結びつくかについての言及がなかったことは、
少し残念です。




体罰事件、君が代斉唱、ゆとり教育etc






ちなみに著者は、大阪府立和泉高等学校校長から、
大阪府教育長を歴任されている、中原徹さんと横浜市議会議員の伊藤大貴さんです。
そのせいか、本書では教育行政や教育と政治の問題について、紙幅が多く割かれています。




  • 体罰事件で露呈した問題の核心(P33)
  • 君が代斉唱時の口元チェック事件の顛末(P59)
  • 教育は政治から中立となり得るか(P63)
  • ゆとり教育か詰め込み教育か(P112)
  • 学校の先生は働き過ぎか(P196)



これらの話題に興味のある方にも、ぜひどうぞ!



【関連エントリ】


ほんとうにいいの?デジタル教科書
iTunes Uと大学教育 -Appleは教育をどのように変えるのか?









2013年5月30日木曜日

日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?

ブラック企業は労働だけの問題か?






部分的には、「なるほど!鋭い」と思って、賛成するところも、多々あります。


  • 日本の労働法制(労働基準法、労働安全衛生法、雇用保険法など)についての教育
  • 労働契約の内容に関する教育
  • 労働基準監督署・社会保険労務士・弁護士など「労働カウンセラー」の利用の仕方
  • 戦前・戦中・戦後にかけての日本の産業変遷


(おおむね)今の学校は、サラリーマン予備軍を育成しているようなものなので、
これらのことは、普通科であろうが、商業科であろうが、理数科であろうが、
高等学校卒業するまでに、全員必修で単位を取るべきだと、個人的には考えております。





Demo / skuds



労働以外で生きる方法を





本書では、新書サイズということもあって、労働問題に終始しています。
それはそれで、意義があることだと思います。ですが意識が労働問題にしかない
ところが、残念です



タイトルにある「違法労働」ブラック企業をなくそうとすれば、
他のさまざまな要因をも、一つ一つ、つぶしていくことが必要だと考えます。



  • 米・小麦の輸入規制の緩和→主食物が安くなる→生活費が安くなる→実質賃金がUP
  • 国内インフラサービスの競争→光熱費が安くなる→生活費が安くなる→実質賃金がUP
  • 公的年金の支給開始年齢の引き上げ→若年者の国民負担が減る→可処分所得がUP
  • 教育の拡充→人的資本の向上→土地・資本に対して要素所得の分配割合がUP




デフレのときは「権利」!でもインフレのときは…?





本書の後半部分を読んでいると、さかんに「権利」とか「中間集団の構成」、
「最低賃金の引き上げ」などが謳われています。
これ自体否定するつもりはありませんが、あまり「権利」にこだわりすぎると、
かえって身動きが取れなくなるよう気がします。




例えば賃金の額を「権利」としてを定めても、インフレなどでお金の価値が、
下がってしまうと、どうなるでしょう?
固定された賃金額では、変動する生活水準を維持することが難しくなります。



かつて幕末期にインフレが起こり、生活が苦しくなったのは、
名目的な俸禄米を支給されていた、中・上級武士や、成長の止まった商家であったと聞きます。
この方々は、世襲や株仲間という一種の「権利」によって地位や生活が守られた人たちです。



おカネの価値が変わるたびに、労使で賃金交渉をしていては、
本業の手が止まり、かえって生産(=収入)が悪くなるような気がします。




「弱い労働者」から「強い労働者」へ






本書で「労働者」は「弱い存在」であるという前提で書かれています。
その前提であるならば、労働だけではなく、


  • 貧困対策は企業ではなく国が直接行う
  • 食料輸入の規制緩和
  • 国内インフラサービス(特に電気・水道・ガスなど)の低料金化
  • 給与所得以外の所得、事業所得、利子所得の稼ぎ方の教育



など、労働者に対して労働以外の生きるオプションを授けておき、
「強い労働者」にしておくことが、肝要だと考えます。
(強いというのは、給料が少なくても生活できるという意味)



「強い労働者」であれば、「お前なんかやめちまえ!」と怒鳴られたときに、
「そしたら辞めますわ」と、キレイさっぱりやめられるのではないでしょうか?



労働とは別に稼ぐ力があり、生活費が安ければ、体を壊してでも、
その職場にとどまろうと考える人はいなくなるでしょう。




【参考文献】


飯田泰之 歴史が教えるマネーの理論 ダイヤモンド社











2013年5月29日水曜日

魔法のラーメン発明物語 私の履歴書

人生は七転び八起きで日々清らかに







行きつけの図書館の「おススメコーナー」で、この本が目に入ってきました。
(このとき、たまたまお腹がすいていただけなのかも)






そういや、チキンラーメンを作っている日清食品・創業者の、
安藤百福(あんどうももふく)さんって、ベンチャー起業家だったような…。





Cup Noodles / Antonio Tajuelo





全ては「ないない」づくしから。でもそれがどうした?





読んでいて目についたことは、とにかく「ない」とか「なかった」とかの言葉の連発。



  • 製塩業を始めるにあたって、塩づくりの経験はない(P41)
  • 金融関係の仕事をしたことがないのに、信用組合の理事長を引き受ける(P53)
  • 信用組合が破たんしたので、無一文になった(P56)
  • めんに予め味がついている、「着味めん」を作ろうとしたが、製法がわからない(P60)
  • 現金決済をしようと思っても食品問屋には、手形決済の慣習しかない(P69)



と、まぁあげればキリがないほど、とにかく「ないない」づくしです。



これぞ「ナニワのど根性」!





チキンラーメンカップヌードルの躍進は、日本の高度成長期を背景としています。
そのせいか本書の内容も、底抜けに明るいような気がします。管理人のような後世の人間はは、
後知恵で「ヨカッタヨカッタ」といえます。



しかし、チキンラーメンの商品試作が出来上がったのは、
安藤さんが48才のとき
というのは、改めてビックリです。これぞまさしく「ナニワのど根性」。
(創業の地である、大阪府・池田市のあたりを「ナニワ」というかどうかは、ビミョーなところですが)


"できあがった生めんを自転車で持って帰る途中、出会った人が振り返っている。「落ちぶれてかわいそうに」とでも思われていたのだろう。しかし、私はこれから開発する即席めんのことで頭がいっぱいだった”

(P59第Ⅰ部私の履歴書)


【参考文献】


日清食品株式会社(監修)
日清食品のラーメンレシピ: おなじみの袋めんが大変身! (LADY BIRD 小学館実用シリーズ)









2013年5月28日火曜日

考える生き方 空しさを希望に変えるために

アルファブロガーの考える生き方






表紙を見ればお気づきでしょうが、本書はいきなり本文から始まっています。
そのまま、最後まで、挿絵なども一切出てこず、著者の思うところがつらつらと書かれています。



特に筋道を立てた文章ではなく、どこのページをめくっても、
そのめくったところから、読み進めて行くことができます。また読んでいて、
特に結論もなく、話が突然終わったりすることもあります。



本書は、書籍としてはエッセイに分類されると思いますが、
エッセイというよりブログと言った方が良いかもしれません。



もっとも、それもぞのはず、著者のfinalvent(ペンネーム)さんは、
finalventの日記というブログを運営されています。月間30万人ほどの訪問者がいらっしゃるとか。
いわゆる、アルファブロガーの方です。





突然ロダンの考える人があって、自然すぎてスルーしそうになった。 / slash__





「外」は分からなくとも「内」は分かる





本書を読んでも、finalventさんとはどんな方なのか、「外見上」はまったく、分かりません。
本人の顔写真が出ている訳でもありませんし、東京のどこに住んでいるかとか、
そういった「見て分かること」には、一切触れられてません。



ただし、目には見えない、finalventが、「心の中で考えたこと」については、
はじめての人にも分かるよう、文章が語りかけてくれています。


  • 第1章 社会に出て考えたこと
  • 第2章 家族をもって考えたこと
  • 第3章 沖縄で考えたこと
  • 第4章 病気になって考えたこと
  • 第5章 勉強して考えたこと
  • 第6章 年を取って考えたこと



ブログのような本





全6章で、本としての体裁をまとっているようになっていますが、
実際のところ、文章としてまとまっているかどうかと言えば、「?」のような気がします。



ただし、それがこの本の価値を損なうかと言えば、
そんなことは決してありません。なぜなら人間の考えることなど、
思っては消え、消えてはまた思う「泡」のようなものですから。



それがかえって、タイトルの「考える生き方」と非常にマッチししていると思います。
ブログというメディアの良さが際立つ作品だと思います。




【関連エントリ】


働くことがイヤな人のための本




2013年5月27日月曜日

コーディングを支える技術 成り立ちから学ぶプログラミング技術

「なぜ」という視点で共通の知識を身につける






管理人は最近、初心者としてプログラミングを学習しています。
その学習で人の説明を聞いたり、参考書の解説を読んでいると、
よく、次のような「枕詞」に出会います。



  • 「これはおまじないの言葉として…」
  • 「お約束の一文なので…」
  • 「そういう決まりごとで…」



例えば、PHPというプログラミング言語で、MySQLデータベースに接続するために、
おまじないとして、次のようなコードがあります。



$dsn = "$dbtype:dbname = $dbname;host = $sv;
$conn = new PDO($dsn, $user, $pass, $options);



まったくの初心の方が、それぞれの意味を理解しようとしても、
何のこっちゃさっぱり分かりません。とりあえずこれらは、「おまじない」として覚えてしまい、
「写経」するのが、学習の第一歩となります。





Coding w/ Gedit / Matrixizationized




「写経」は学習の第一歩なのだが…






「写経」とは、文字通り参考書のコードをエディタソフト(メモ帳ソフト)に
書き写すだけのことです。何回か、同じコードを「写経」しているとそんなものかと、
思い始めて、タイピングをするのもラクになってきます。



何せ全くの初心者(管理人)は、英文タイプも全くできないし、";"(セミコロン)や"."(ドット)の
脱字も頻繁に起こります。それが「写経」を何回か繰り返すと、コード全体の字面が、
見慣れてきて、綴りミスや記法ミスなどの初歩的なミスが減ってきます。




人間が作ったコードには意図がある





しかし、その「写経」が良いことばかりではありません。
「写経」に没頭しすぎると、デメリットもあるように思います。



  • タイピングに集中するあまりコード全体の流れを読まなくなる
  • 「決まり文句」や「お約束」を当たり前のことと受け止め疑問をもたなくなる




このデメリットを放置しておくと、せっかく何かの言語を習得しても
トレンドの早いプログラミングの業界では、そのスキルはすぐに使い物にならなくなるそうです。



本書では、プログラミング言語がもつ諸概念が、「なぜ」存在するのかを解説します。


"本書のテーマは、その「なぜ」を理解することです。そのために本書では、言語設計者の視点に立ち、複数の言語を比較し、そして言語がどう変化してきたのかを解説します。いろいろな概念が「なぜ」生まれたのかを理解することで、なぜ使うべきか、いつ使うべきか、どう使うべきかを判断できるようになるでしょう。そして、今後生まれてくる新しい概念も、より一層理解しやすくなるでしょう"

(裏表紙より)


【関連エントリ】


Webサービスを始めるためのPHP特集
ブログじゃないWebサイト制作について WordPress特集





2013年5月26日日曜日

ほんとうにいいの?デジタル教科書

デジタル教科書は通信添削に向いているんじゃないの?





"デジタル教科書は、応用力をもって課題を解決していく人材を育てられるか"
(表紙より)



非常に「薄い」本なので、内容はデジタル教科書に関する、問題提起に絞っています。
もちろん「薄い」といっても、「読む価値がない」という意味ではありません。
デジタル教科書に関する問題は、理想的な答えなどすぐ出ない性質のものでしょう。



ということは、デジタル教科書をはじめとしたITを活用した教育サービスは、
さまざまな立場の人や思惑が交錯し、試行錯誤する市場経済に向いている
気がします。



何しろ国内の教育市場は2兆4000億円強で、このうちネット化されたサービスは、
わずか3%の675億円にとどまっているそうです。



有料ページで、購読者の方しか読めませんが、詳しくはコチラまで、どうぞ
日経ビジネス2013年4月29日・5月6日号 デジタル先生、教育市場を侵食





iPad / Sean MacEntee





デジタル教科書から見る教育の問題点






本書が意識しているのは、小学校高学年から中学生に関する学習で、
上記の日経ビジネスが意識しているのは、すでに学校を卒業した社会人の学習です。



年齢層に違いはあるものの、本書で提起されている
デジタル教科書の「問題」を意識をすることは、
とりもなおさず、教育ビジネスの拡大につながることだと考えます。



以下では、デジタル教科書に関して、「ソフトウェアから見た問題」
「デジタルコンテンツと学びの質」について、列挙していきます。





「ソフトウェアから見た問題」と「デジタルコンテンツと学びの質」について




  • 問題点その1:

Web上のハイパーリンクやアニメーションは理解を促進するのではないか?(P30)

"課題となっているのは、文章を論理的に読み取ったり、抽象的な概念を理解したりする部分であり、そこで学力格差が生じている。学力格差が、具体と抽象の間の溝を飛び越える能力の格差に由来するのだとしたら、アニメーションやドリル型デジタル教材は学力格差を埋める上であまり役に立たない。"



  • 問題点その2:

オンライン上の無償サービスは、必ずしも教育に向けて設計されているわけではない(P35)

"たとえば、検索エンジンは、世界中の人々が適切な情報にアクセスすることでより深い世界理解にたどりつけるよう提供されているわけでは、ない。"



  • 問題点その3:

学習者の入力形式で圧倒的に多いのが「選択肢型」であること(P37)


"iPadの指を使ったマルチタッチによる入力などは真新しく感じられるが、基本的には「選択」の入力をスムーズにしたに過ぎない"



問題点を記述していると、デジタル教科書のメリットを最大限を生かためには、
昔から存在している通信添削の教育に、特に向いているのではないか?と考えます。
通信添削のノウハウをデジタル教科書に置き換えるのが良いのかもしれない。



ということは、問題作ったり、添削したり、学習管理するのは、
コンピューターの仕事ではなく、人間の仕事
ということになりますなぁ。




【関連エントリ】


学校を変えれば日本は変わる 強い国・日本は公立改革で生み出す
iTunes Uと大学教育 -Appleは教育をどのように変えるのか?





2013年5月25日土曜日

なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?

勉強することの効用について







タイトルを見て、「それはなぜか?」と読みすすめていくと、
「やっぱりな…」と思わずにいられません。


「勉強をしない大学生を生む負のスパイラル」(P2)


  • 採用担当者

学生はどうせ勉強してないから、面接ではバイトやサークルの話を聞くしかないんです。
正直、大学の先生にはもっと学生を鍛えてやってほしいです。

↑↓

  • 学生

就活で成績を見る企業はほとんどない。だったら楽に単位が取れる授業をとって、
面接でネタになるバイトやサークルに時間を割いたほうがいい。

↑↓

  • 大学教員

しっかり教育をしようとすればするほど学生が離れていく。
こんなことなら適当にやった方が楽だし、自分の研究に時間を使える。
そもそも、学生は就活にばかり熱心だから授業に興味をもってくれないんだ。



このようなねじれは当事者にしてみると、
「けっして良いとはおもっていない」けれど、「イヤな状態ではない」
(P127)ということになってしまいます。



その辺の詳しいところは、はこちらのサイトまでどうぞ
大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(NPO法人DSS)





West quadrangle at the University of Glasgow

West quadrangle at the University of Glasgow / euanfreeman





「脳みそに汗をかかせる」ためには?





管理人も、大学は卒業しましたが、本書のおっしゃるとおり、
「脳みそが汗をかく」ような勉強はしてません。お恥ずかしい限りです。
こんなブログを書いていてアレですが。



したがって本書で記されていることについて、今さら驚くことはありません。
もっとも、それはそれで非常に心許ないことですが。



じゃあ、どうすれば良いのでしょうかねぇ~。
これからどんどんコンピューターの頭は賢くなることが考えられても、
アホになることは考えられませんし。





「考える力」は「就業力」以外にも使えるか?






本書では、「大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる」ために
学業における「考える力」に注目しています。



なぜか?


”授業で扱うテーマは、「理解することも難しい」「一定の量の記憶も同時に必要」「論理的に考える必要がある」「概念的な問題も多い」「プロ中のプロである先生との対話」等々、頭を極限まで使わなければどうにもならないことばかりです。"


(P163 第3章「考える力」こそ日本を救う)



個人的には、その「考える力」を学生の就業力向上だけでなく、
「これはこうつながるんだ!」とか「フにおちた!」「ピーンときた」など、
人間の感性や可能性の向上にもつなげたいもんです。



カーン・アカデミーとまた違った感じで、オンライン上で経済学の教育サービス
展開できんかいな?と考えているもので。




【参考文献】


新井紀子 ほんとうにいいの? デジタル教科書 (岩波ブックレット)







2013年5月24日金曜日

日本成長戦略40歳定年制 経済と雇用の心配がなくなる日 その2

図で分かる!40才定年制






前回は、ラジアの年功型賃金モデルを使いながら、
日本の雇用慣行と公的年金の制度について、考えてみました。



タイトルにある通り、著者は40歳定年制にして、
年齢と賃金の関係をどのようにすべきか著者の主張をまとめると、次のとおりです。


  1. 20才から75才まで働くとして、人生を3ブロックに分ける
  2. 40才・60才で区切りを設ける
  3. 2つの区切りで、学び直し、キャリアアップ、現状維持などのキャリアプランを設ける
  4. 賃金はその時の能力、働く意欲などによってオープンな労働市場で決める。


40才定年制の賃金モデル







作図は、管理人が想像しながらオリジナルで作ってみました。




教えて!40才定年制 Q&Aのコーナー





当然、40歳定年制を設ければ、各所から批判が続出するでしょう。
本書でもかなりの部分が、批判や反対意見に答える内容になっています。
その一部を抜粋しておきましょう。



本文中はそうなってませんが、Q&A式にしています。
その方が、分かりやすいと思い、管理人が個人的にまとめさせていただきました。
(あまりやると本を読む楽しみがなくなるので、3つぐらいにしておこう)



Q:40歳定年制になると40才で、政府が強制的に退職を決めることになるのではないか?
A:40歳定年制とは、75才まで働ける社会を目指しており、世間の実情と労働法との乖離をなくそうとしている

(P13 第1章日本の新しい形をつくる)


Q:40代は教育費や住宅ローンなど人生で最もお金がかかる時期。その時期に転職するのは…。
A:転職市場を活性化し、「スキル再構築」、「学び直し」など教育制度を盛り込む


(P98 第2章日本を活気づける「40才定年制」)


Q:今働いている40代・50代にしてみれば、40歳定年制は割りを食ってしまうではないか?
A:過渡的な問題は生じる。だからといって何もしないで良いという理由にはならない。所得補償などの激変緩和措置で対応する。


(P96 第2章日本を活気づける「40才定年制」)






Q&A / quinn.anya




Google先生も教えてくる40才定年制





柳川先生の「あるべき論」が先行していているような気もしますが、
40歳定年制は、ところどころ注目されているのもまた事実です。





「40才」、「定年制」とかで検索かけたら、Google先生がいろいろと教えてくれますので、
興味のある方はぜひどうぞ。




【関連エントリ】


独学という道もある
日本成長戦略40歳定年制 経済と雇用の心配がなくなる日
たった1%の賃下げが99%を幸せにする
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その1



【参考文献】


城 繁幸 若者を殺すのは誰か? (扶桑社新書)






2013年5月23日木曜日

日本成長戦略40歳定年制 経済と雇用の心配がなくなる日

ラジアの年功型賃金モデルについて






本書を読むと、日本型雇用の核心にある


  • 終身雇用
  • 年功型賃金
  • 定年



三種の神器について、エド・ラジアという労働経済学者の理論を紹介しながら、
目からウロコが出るほどクールに説明されています!



「法律がどうたら」とか、「日本民族はそもそも」など、解読するのに
やたら時間がかかりそうなことを、作図を使って、5秒で理解できるでしょう。






Salarymen / WordRidden





若いとき低く、年をとってから高く





ラジアの年功型賃金モデルとは、具体的に次のとおり。
若いころの賃金は低くなりますが、40歳を超えてから、貯金を引き出すような形になっています。



  1. 若いときの働き(生産性や貢献度)に対して、賃金は抑えられる
  2. 40歳くらいで、働きと賃金が等しくなる
  3. 40歳を超えると働きよりも賃金が上回る
  4. 若いときと中高年のときの差分(働き‐賃金)がゼロになるところで定年が決定


ラジアの年功型賃金モデル







普通の貯金であれば、銀行に「返してくれ」と言えば、
20年後でも30年後でも、貯金は返してくれます。



しかし、年功型賃金モデルの貯金の特徴は、退職すると、
若いころの貯金を返してもらえないこと。したがって、
40歳以降というのは、「絶対やめたくない世代」になることが分かります。



ちなみに、このモデルを使って、定年延長制を説明すると、次のとおり。
40才以降に引き出すはずの貯金が、薄く延べられるという感じです。



  1. 上記の4で決まっていた定年を右にシフト
  2. 右側の面積を一定に保つため、A点から右側にある賃金の傾きを緩やかにする


ラジアの年功型賃金モデル(定年延長制)






年功型賃金も公的年金も構図は同じ




という感じで、本書のある部分を要約しましたが、
まとめていて気づくことがあります。



「年功型賃金モデルって賦課方式の公的年金と同じじゃないの?」
(賦課方式の公的年金についてはこちら)


(共通点)

  • 公的年金も先に給与税(社会保険料)を納めて、あとから年金を支給を受け取る
  • 若年層が高齢層を養う構図
  • 年功型賃金も公的年金も大きな単位であり、誰が誰を支えているのか分かりにくい



ネズミ講と同じで、親ネズミが少なくて、子ネズミがどんどん増えているうちは、
なかなか上手いサイクルです。
しかし、親ネズミが増えすぎて、子ネズミが少なくなると、エライことになりますなぁ。


(つづく)



【関連エントリ】


独学という道もある
日本成長戦略40歳定年制 経済と雇用の心配がなくなる日 その2
たった1%の賃下げが99%を幸せにする
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その1


【参考文献】


城 繁幸 若者を殺すのは誰か? (扶桑社新書)








2013年5月22日水曜日

ガブッ!とわかる世界一やさしい行動経済学の教室

行動経済学の初歩テキスト







本書自体は、行動経済学の考え方や理論の紹介そのものに終始しています。
素っ気ないといえば、それまでですが、本書を読んでおけば、次の本が
ぐっと読みやすくなります。



ダン・アリエリー
予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版
早川書房






ロバート・B・チャルディーニ
影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
誠信書房






これらは、大学の経済学部の方だけでなく、社会学心理学を専攻している方にも、
おススメできる本です。




分量の多い本を読む前に





両書ともにアマゾンのレビューでなかなかの評価を得ています。
しかし何せ分量が多い。先にガブッ!とわかる世界一やさしい行動経済学の教室の方で、
「予習」をしておけば、読む時間の短縮が図れるでしょう。




読み切れないほどドラマチックな内容は、良かったのですが、
その分、個々の理論や考え方を把握するのに時間がかかります。
つまり、つまり最もおススメな読み方は、補完的に読むことです。





人体実験 / yuichirock




キホンは主流派経済学





行動経済学と聞くと、なんだかこれまでの経済学(主流派経済学)を飛び越えて、
全く独自理論のように聞こえるかもしれません。しかし、行動経済学は、
「経済学」と名がついているように、主流派経済学から派生した分野です。


"ただし、あくまで行動経済学は従来の経済学の一分野です。経済学の標準的なモデルをベースにして、現実の経済活動や人間行動を補完的に説明しようとする試みです。ですから、経済学の基本的な知識も押さえておく必要があります"


(P36 第1章なぜあなたは宝くじを買ってしまうのか?)



そういや行動経済学については、最近の標準的なミクロ経済学のテキストでも、
最後の方に言及していたなぁ。




【関連エントリ】


影響力の武器第二版 なぜ、人は動かされるのか



【参考文献】


山岡道男 淺野忠克 ガブッ!とわかる世界一やさしいミクロ経済学の教室 アスペクト