2013年4月30日火曜日

なめらかな社会とその敵 PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論

評価経済社会のお話かなぁ(多分)







以前、岡田斗司夫さんの評価経済社会という本とつながりがありそうなので、
読んでみた。他にも著名な評論家やブロガーの方が、書評をされていたのを
見かけたので、乗っかってみた。






ただし、ミーハー根性で読んだだけなので、上手く感想が述べられない…。
(元々、他の本でも感想なんて書いてないじゃないか!とご指摘を頂くかもしれないが....)





Money / 401(K) 2013




なめらかな社会・その敵




というわけなので、今回のブログは、タイトルでも使われている
専門用語についてのまとめだけです。詳しい解説をお求めの方は、
上記のブログかもしくはアマゾンのレビューにでも、飛んでください。


  • なめらかな社会
"なめらかな社会では、社会の境界がはっきりせず、だんだんと曖昧になっていく。ある人が日本人であると同時にフランス人であったり、ある土地が日本の国土であると同時にロシアの国土であったりする。(中略)そうした状況が、家族、職場、地域、国家などのあらゆる領域で起こっていく。"

(P42 第2章なめらかな社会)


  • その敵
(すいません。「第11章 敵」という章立てがあって、詳細に説明されているようですが、
ブログの引用文としてどこがふさわしいのか、分からなかったので各自でご確認願います)




PICSY・分人民主主義?構成的社会契約論?




  • PICSY(Propagational Investment Currency System)
"経済活動の中での貢献の度合いに応じて購買力が与えられるとしたら、それは公正な貨幣システムであるといえよう。すると、どのように貢献の度合いを計算するかという問題と、その値に応じてどのように購買力を与えるかという問題に分けることができる。PICSYでは、その貢献の度合いを行列計算を用いて計算していることになる。"

(P57 価値が伝播する貨幣)


略語の中に"Investment"とあるぐらいなので、ベンチャー企業や革新的な技術について、
評価するのに向いているかもしれません。
逆に、作業時間やコストの積み上げが、
容易な既製品は、従来の貨幣に向いていると思います。
(もっともこのPICSYが世の中に浸透するのに、200年くらいはかかりそうな気がするが…)



というわけで、分人民主主義構成的社会契約論についても、
どこか引用を引っ張ってくれば、良いのでしょう。ただ「タイピング」するだけなのも、
アレなんでここでやめておきます。



後は興味のある方が読んでくださり、管理人では説明しきれなかった
要約や感想を聞かせていただくことを願っております。




【関連エントリ】


評価経済社会~ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている




2013年4月29日月曜日

山形道場 社会ケイザイの迷妄に喝!

そこまで言うか!山形師匠







特に脚色もなければ、どこかへの配慮も見当たらない、軽妙な語り口での文章。
山形浩生さんの特徴でしょう。ご自身がオリジナルで書いた文章だけでなく、
翻訳家として、海外の作品を翻訳した文章さえも、そんな感じです。



そんな「かる~い」文体とは、裏腹におっしゃっていることは、
ずいぶん本質をついてます。「そこまで言うか!」という具合に。






talk / lovelornpoets




雑文集。つまり「ぶっちゃけトーク集」




基本的に、山形浩生さんが、物事を判定する基準は、「費用と便益」です。
ある物事に対して、メリットとデメリットを列挙してみて、「メリットが多かったら
やりましょうや」という感じの人。



それに付随して「メンツがどーたら」とか
「タイメンがあーだ」とか言い出すと、喝!!!(とおっしゃると思う)



本書は雑文集なので、これといった一貫したテーマがあるわけではありません。
ご本人が、「でたらめなくらい首尾一貫していない(P13) 」と書いているぐらいです。





「臭いものの蓋」さえひっくり返す舌力





ここまで内容については直接触れず、山形浩生さんが書く文章や文体を述べてきましたが、
本書で、それが如何なく発揮されているのが、「第6章 社会文化に喝!」の
「たかる社会にたかる人々」




かつて完全自殺マニュアル なんて、本がありましたね。
その本をマクラにして、「そこまで言うか!でも当たっている…」というぐらい
強烈に本質をついています。これを読んだら、一億総懺悔というぐらいに。




管理人は、なるべく本を読んで、「コレは!」と思って感じたことは、
素直に書くように心がけていますが、さすがに「このこと」については、
引用するのも紹介するのも、ためらいを感じます。



どうしても気になる人は、「第6章 社会文化に喝!」の「たかる社会にたかる人々」
読んでみてください。P245から15ページほどなので、量はさほどありません。



また出版年は、2001年で10年以上前ですが、今読んでも全然違和感はありません。
むしろ、「臭い物に蓋をする」ような扱いを受けてきたようなことなんで、
後になって知ると、余計に「におい」を感じます。




【関連エントリ】


医療にたかるな
訳者解説 新教養主義宣言リターンズ




【参考文献】


山形浩生 要するに (河出文庫)








2013年4月28日日曜日

ともに戦える「仲間」のつくり方 その2

「草ベンチャー」の経済学








前回は、便利さのあまり、思わず「草ベンチャー」の話をしてしまいました。
本来、この本を読みたくなった理由は、「草ベンチャー」のすすめの方ではありません。




南壮一郎さんが立ち上げたビズリーチは、web上の求職者課金型の転職サイトです。
なのに、最初期には、


  • プログラマはいない
  • SE(システムエンジニア)もいない
  • メンバー2人はプログラミング経験なし
  • 十分な金もなし


この状況で、どうやってサービスを始める気ですか?
読みながら、ツッコミを入れてしまいましたが、本書のタイトルを見れば、
南さんが、その困難をどのように克服したか、おおよその想像は、できるでしょう。





牧草うまうま♥ / matsubokkuri




社長はシステム開発から「撤退」




一般的に、会社として必要な業務には、システム開発だけではなく、
営業や広報、マーケティングなど、その他もろもろがあります。



ただ、個人的にはwordpressをダウンロードしながら、
ブログじゃないCMS(コンテンツマネジメントシステム)を構築している身としては、
「システム開発未経験者2人がどうやってサービスを始めるんだろうか?」
と、他の業務以上に気になります。



そういう視線で本書を繰り返し読むと、ハタと目が留まる箇所があります。


”「昨日テストチームが見つけたバグリストは100個ぐらいあったけど、その進捗は?」
「もう90%ぐらい終わってるよ。残りは優先順位が低いから後回しだって」
「前はバグを10個つぶすだけで1日が終わっていたのに…まるで夢のようだ」”

(P193 第7章仲間がチームになった真夜中の「ビズリーチ・タイム」)


このころ、頼れるシステム開発者に、「草ベンチャー」入りをしてもらっています。
また、仲間の進言により、南さん自身はシステム開発の仕事については、
手を引かされています。



「限界収穫逓減の法則」と「分業の利益」





ところで、この引用に関わる事例って、あの有名な人月の神話でも語られていた、
「限界収穫逓減の法則」の典型例じゃないですか?



(業界筋では有名であろう)この本では、
ある開発プロジェクトを担当するプログラマーの人数を増やしても、
それに比例してプログラム開発時間が、短縮されるわけではない、と指摘されています。



「限界収穫逓減の法則」というのは、ミクロ経済学の重要概念の1つです。
この人月の神話でもっと厄介なのは、ある点を超えてプログラマーを追加することは
コードを追加するどころか、かえって「反生産的」になる
ことを指摘している点です。







この本をよーく読んでいると、ミクロ経済学の重要概念の典型例と見られる事象があります。
特化による「分業の利益」とか。クルーグマン ミクロ経済学と並行して読むと、
よりいっそう面白いかもしれません。




【関連エントリ】


Eric Sink on the Businness of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方
ともに戦える仲間のつくり方
人月の神話~狼人間を撃つ銀の弾はない



【参考文献】


ポール・クルーグマン クルーグマン ミクロ経済学 東洋経済新報社








2013年4月27日土曜日

ともに戦える仲間のつくり方

サラリーパーソンにとっての福音。「草ベンチャー」のすすめ







なかなか便利な言葉だと思ったので、ブログに載せておこうと思ったら、
すでにGoogleの検索予測にひっかかるではないか。草野球ならぬ「草ベンチャー」


"草野球をやるようにベンチャーを手伝ってもらう仕組みです。何か新規事業の立ち上げやベンチャーを手伝いたい人がいたら、自分の空いている時間、週末だったり、平日の就業時間後だったり、会社に集まってもらって、立ち上げ業務に主体的に関わってもらうというもの"



(著者でもあり、株式会社ビズリーチ代表取締役でもある南壮一郎さん。
本書のP49でも同様の記述あり)

日経ビジネス【9回表】 草野球ならぬ、「草ベンチャー」のすすめ






Hannah at Baseball Practice / bob194156




「週末」・「真夜中」・「ボランティア」でベンチャー起業を立ち上げ




ベンチャー企業のWebサービスやシステムを見ていると、素人目に見ても、
複数人で作られたものである、と分かるときがあります。
その割には、何人もの人を食わせるだけの、収益が上がってそうな様子もありません。



管理人は、昨年、その中のある1社の代表者の方に向けて、
実際にemailで尋ねてみたことがあります。「人手はどうやって賄っているんですか?」と。
代表者曰く、「ほとんどボランティアで回しています」




管理人の記憶では、そのとき合計10名ぐらいの人数はいたそうですが、
フルタイムで働いてるのは、代表者を含めて2人ぐらいで、
あとはパートタイムのボランティアか、インターンの学生さんだったと思います。



冒頭で述べた、南さんの記事は2010年です。私がベンチャー企業の社長から
直接聞いたのは、2012年なので、「草ベンチャー」は、足元で、
少しずつ伸びてきているような気がします。




サラリーパーソンの新たな「資産分散」




この記事を書く前に、世上で騒がれているブラック企業やブラック労働の問題について
おちゃらけミクロ経済学でまとめていました。そのとき参考文献にさせてもらったのが、
僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?です。



この本の第5章、第6章を読むと、この厳しい世の中をサバイブするためのコツが、
8つ挙げられています。その3番目と4番目に、こんなものがあります。


  • 労働力を「消費」するのではなく「投資」する(P241)
  • 長期的な「資産」をつくる仕事を選ぶ(P245)


今の世の中、収入の100%を労働から得ていると、
ハイリターンが見込めても、ハイリスクのような気がします。



しかし、南さんがおっしゃる「草ベンチャー」方式ならば、
サラリーパーソンとしての収入は、ローリターンになるかもしれませんが、
人生そのものは、ローリスクになるかもしれません。



21世紀の中葉にかけて、このライフスタイルが当たり前になるかも。




【関連エントリ】


Eric Sink on the Businness of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方
ともに戦える「仲間」のつくり方 その2
僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
「たかが草野球」で人生が変わる




2013年4月24日水曜日

資本主義と自由(日経BPクラシックス)

「政府の介入は必要悪」








この本を読んでいると、著者のミルトン・フリードマンは、フリードリヒ・ハイエク
お友達なんじゃないかなぁ、と思ってしまいます。彼らは、いわゆる「自由主義」
考え方をする人たちです。



「第12章 貧困対策」のP352からP353で書かれている、「自由主義」「平等主義」
定義において、彼らの考え方が、はっきり分かります。



【自由主義】
"自由主義では、各自が自分の考えに従ってその能力と機会を最大限に生かす自由を尊重し、このとき、他人が同じことをする自由を阻害しないことだけを条件とする。この点では平等を、ある点では不平等を支持することを意味する。"


【平等主義】
"だが、平等主義者はさらに一歩踏み出そうとする。彼らが「誰かから取り上げて別の誰かにあげる」ことを認めるのは、目標を達成するための効率的な手段だからではなく、「正義」だからなのだ。"





Berlin wall memorial / ingo.ronner





自由主義の政治思想




この自由主義の考え方にもとづいて、


  • 国際金融
  • 国際貿易
  • 国内産業
  • 教育
  • 職業免許
  • 社会資本整備
  • 医療制度
  • 老齢年金



など、今の日本でも主要課題となる各種政策の「あるべき姿」が、述べられています。
それぞれを貫く基本思想は、「政府の介入は最小限に」です。



やむをえず、政府が介入する場合には、その関与をいかに少なくするか、
ということに焦点が絞られています。



フリードマンは、「正義」というものは、人間の恣意性によって歪められ、
かえって、社会全体のコストを押し上げてしまう
ことを憂慮しています




ベーシック・インカム?究極の貧困対策





この文章を読んでいると、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスを思い出します。
自叙伝である、ワンクリックで、オンライン書店の立ち上げの下りを読んでいると、
こんな見出しが出てきます。



  • 「人間の介入は必要悪である」



つまるところ、一国の政策もweb上の書店運営も、根本思想は同じなのでしょう。
人間がこねくり回して考えるのではなく、システマチックに決めてしまえば
人間の恣意的判断よりも、資源の分配が効率的
に行われると、
フリードマンもベゾスも考えているのでしょう。



その最たる例が、「第12章貧困対策」で登場する、「負の所得税」です。
ベーシック・インカムと似たような考え方です。



フリードマンは、自由主義者だからだといって、貧困者を放置しておけば良いとは
全く考えてません。貧困対策は、「数少ない」政府直轄事業の1つである、と主張します(P348)



ただし、その予算は「貧困者に直接現金給付」をするのであって、
特定の集団、組合、年齢層や産業の人たちに向けてはならないとします。従って、


  • 農産物買取価格保証制度
  • 老齢年金制度
  • 最低賃金法
  • 労働組合に関する有利な法律
  • 関税
  • 職業免許制度


などの制度は、「失格か落第」というかなり手厳しい判定をしています。




【関連エントリ】


隷属への道 ハイエク全集 I-別巻 【新装版】
世界を変えた10冊の本
フリードリヒ・ハイエク
やさしいベーシックインカム
ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛







2013年4月23日火曜日

困ってるひと

「難民女子」、システム不全とたたかう






著書である大野更紗さんは、今の日本において、自分の「住所」がなきに等しい状態です。
言語を絶するほど、2つの意味で、「困って」います。


  • 「筋膜炎脂肪織炎症候群」
  • 「身体障害程度等級 二級」


1つ目は大野さんの病気が、自己免疫系の特殊な疾患であること。
検査体制も、治療法も確立されていません。専門医も日本に指折り数える程度しかいません。



2つ目は、現在の社会保障制度のセーフティネットに、ひっかかりにくいこと。
障害者福祉施策が、太平洋戦争中の傷痍軍人の救済を目的としているため、
大野さんの症状や闘病生活を支えるのに、必ずしも適していないことです。



言い換えれば、彼女は、「体のシステム」と「社会のシステム」と2つのシステム不全と、
立ち向かわなければならない
方なのです。
(彼女はこのことを、『わたし、溺れる。「制度」のマリアナ海溝へ』と表現している)






Hospital Geral do Estado / Fotos Gov/Ba




専門医でさえ迷う「住所不明な疾患」





以下、管理人があーだこーだと書くよりも、引用をそのまま使わせてもらった方が、
大野さんの主張が伝わると思います。まずは医学的なことから。



【検査のための骨髄穿刺について】
"こう「針」ではなく、「釘」としか言いようのない、つまりはクギのついた、巨大な注射針を、一応局所麻酔をして、腰にぶすっと突っ込み、ゴリゴリゴリと力任せに腰骨を突き刺し「ヒュッ」と骨髄液を採取するのだ。どうだい想像するだに戦慄するであろう。"

(P92 第四章 わたし、壊れる)


【卵巣膿腫のためお尻がパンパンに腫れ上がったあとの出来事)
”わたしのおしりは、ついに破裂した。(中略)とにかくわたしの液状化したおしりは、流れ続けていた。わたしは立たされ、地球の重力に従って落ちてくるチョコレートフォンデュ状態の「元おしり」液体を、I君(男性看護師)がボトルで受け止める。"


(P195 第九章 わたし、流出する   かっこがきは管理人が書きました)



大日本帝国がつくった?障害者福祉制度




次に、日本の社会保障制度について。


【難病患者が制度の狭間に陥っている存在であることについて】


"戦後、戦争で怪我を負った軍人さんの保護を主たる目的に始められた日本の障害者福祉施策においては、「目に見える障害」=「身体障害」という、概念がいまだにメインストリームとして引き継がれている。どんなに苦しくても、痛くても、関係ない。"

(第十章 わたし、溺れる)


【社会福祉制度が複雑怪奇な「モンスター」であることを悟った時の決意】


"ひとが、最終的に頼れるもの、それは、「社会」の公的な制度しかないんだ。わたしは「社会」と向き合うしかない。わたし自身が「社会」と格闘して生存していく術を切り開くしかない。"

(第十一章 わたし、マジ難民)



【関連エントリ】

2013年4月22日月曜日

日本人というリスク

「地獄への道は善意で敷き詰められている」(P88)






本書の「成分」を分析すると、次の3つの本に分解されます。





そして、これら3冊の本と本書の合計4冊を足し合わせると、
なんとミクロ経済学のテキストが出来上がります!それぐらい考え方が相通じる本たちです。



どれかを読めば、ミクロ経済学の概念に行きあたりますので、
3冊読むの面倒くさいと思った人は、クルーグマンでもマンキューでも
スティグリッツでも、どれか一度、通読してみてください。







Japanese Language Book / born1945





哲学者・中島義道との共通点とは?





さて、ビジネス界で活躍している(?)「勝間本」「金持ち父さんシリーズ」は、
市中の書店で平積みにされて、内容もご存知の方も多いかと思います。



「分散投資」とか「B/S(バランス・シート)」とかいう単語を
キーワードにしていただければ、なぜ本書と似ているのか、
「はは~ん」と感づかれると思います。



問題は、世の中をフてた眼差しで見ているような、
哲学者の中島義道先生の思考法と本書の著者である、橘玲さんとが、
なぜ共通するのかです。



中島先生は、当人同士の合意さえできているのであれば、
他人のために詩を詠んで暮らすもよし、愛人になって糊口をしのぐのもOK、
というぐらいの、市場取引思考の人ですから、なんとなく分からないでもありません。



ですが、そういったミクロ経済学の論理的な思考様式以外に、
動物的な本能として、両者は似通っているところがあります。




「善意」はどうやって断るか?





今、手元に中島先生の本が手元にないので、うる覚えで書いていますが、
「嫌いな人」の一つに、こんなタイプの人がいたような気がします。



  • 「お前のためを思って言っているんだ!」とかいう人



どういう流れで、中島先生がこんな人を「嫌い」になったのかは、忘れました。
ですが、本書の「地獄への道は善意で敷き詰められている」という文章を読んだとき、
とっさに頭の中でつながりました。



他人の「良かれ」と思って勧められていることが、実は「地獄への道」と感じたときとか。
みなさんはどうされているんでしょうか?悪意をもって勧められている分かったときの方が、
判断しやすくて、断る悩みがなくていいんですけど。




【関連エントリ】


私の嫌いな10の人びと
働くことがイヤな人のための本




【参考文献】


柳川範之 水野弘道 為末大 決断という技術 日本経済新聞出版社









2013年4月21日日曜日

コモンズ ネット上の所有権強化は技術革新を殺す

「自由」ってなかなかイイもんだよ!







まず、問題です。


  1. 羊飼いが自分の羊だけに草を食べさせようとすると、共同の牧草地はどうなるか?
  2. 漁師が先を争って、魚を取り出すと漁場はどうなるか?
  3. 目的地に早く着くための高速道路を、皆が一斉に使いだすとどうなるか?


それでは、答えです。


  1. 牧草地の草は過剰に摂取され、結局は羊の食べる草がなくなる。
  2. この漁場ではやがて魚が取りにくくなり、漁師の生計が立たなくなる。
  3. 渋滞が発生し、かえって目的地に着くのが遅くなってしまう。


これらは、ミクロ経済学がいうところの「共有資源」の問題です。
それぞれの財は、正当な対価を支払わなくても、利用することはできます。



そのため、「われもわれも」と、全員がフリーライド(ただ乗り)しはじめ、
「共有資源」が消費しつくされます。





「共有資源」の問題から得られる教訓は、「ただ乗り可能な財」については、
消尽されないために、市場取引の規範だけではなく、法律などの別のコントロールが、
必要であるということです。






DSCF2865 / HIRAOKA,Yasunobu





本書は「共有資源」の応用編





が、ここまでは教科書的なお話です。
本書でも「共有資源」の問題を扱っているので、牧草地や漁場、高速道路の
考え方が、「ある程度」までは当てはまります。ただし、決定的に違うことは、
インターネットの世界が具体的な「ブツ」の体裁をなしてないことです。



「ブツ」の体裁をなしていない、インターネットの世界で、
リアル空間で使われている、市場取引と法律の規範だけを持ち込むと、
我々の自由な生活はどうなるか、というのが議論の始まりです。



「インターネットの一部をなしているケーブル回線や
ADSL回線はブツの体裁をなしているじゃないか!」
という反論も、聞こえてきそうですが、これらも教科書的な対応だけでは、
間に合わないことが説明されています。




日常生活でできるコモンズの実践





「議論のタネとしては非常に面白いが、読んでどうせいっちゅうんじゃ!」



10年以上前に刊行された本なので、すでに本書の内容を知っている人は、
思われたかもしれません。訳者である山形浩生さんも「あとがき」で、
そう述べられています。



「どうせい」っちゅうことは、議論の筋を丁寧に追うことによって、読み取ることはできます。
しかし、それでは手早く読むためのブログの記事として、成り立ちません。
したがって、結論だけ述べておきます。


”あなたにできる/すべきことーそれはいまあるイノベーションのプラットフォームーインターネットでもいいし、それ以外の各種コモンズ(共有資源)でもいいーを使って、どんどん新しいものを創り出すことだ。自ら既存の資源を利用してイノベーションを行い、開発を行い、創作を行って、自由を精一杯活用し、自由の持っているポテンシャルを実現することだ”


(P419「訳者あとがき」かっこ書きは管理人がつけました)


【関連エントリ】


ネット帝国主義と日本の敗北 搾取されるカネと文化
「ネットの自由」VS著作権 TPPは終わりの始まりなのか




【参考文献】


ローレンス・レッシング REMIX ハイブリッド経済で栄える文化と商業のあり方 翔泳社









2013年4月20日土曜日

生命保険のカラクリ

ネットを主要な販売チャネルとするライフネット生命保険






ネット生保業界のスポークスマン的な岩瀬大輔さんが、
書いた生保業界の本です。読後に感じたことは、
何かプレゼンテーションを受けたような感じがします。


  • 生命保険の販売手法
  • 保険金不払い問題
  • 保険会社の収益源
  • 金融当局による新規参入の奨励(2005年)
  • ライフネット生命保険株式会社について



最後に自社のアピールポイントを、さりげなく載せているところが、
プレゼンとしてのそつのなさを感じさせます。







BABY JOY / Shutter Bunny




硬軟おりまぜて初心者にも分かりやすく




内容的には、生保業界にいる人ならば、周知の事実かもしれません。
しかし、本書では、業界の外にいるような人でも分かるような説明が、なされています。



岩瀬さんご自身の保険との出会いから、統計資料を駆使した業界全体の
収益構造など、説明は非常に分かりやすかったと思います。
(生保商品は分かりにくいものが多いにもかかわらず)




事業を立ち上げようとする人にもどうぞ





生命保険について詳しく知りたい人は、一読することをおススメしますが、
これから何か事業を起こそうと考えている人にも、おススメできるのではないかと思います。



業界は違えど「起業家が何を見ているか?」という視点は、
どんな事業でも使えそうな気がします。



ライフネット生命保険株式会社は、2006年10月に74年ぶりの独立系生命保険会社として
誕生した、いわばベンチャー企業です。新規参入をするときに、



  • 生保市場の規模
  • 市場の現状と問題点
  • 自社の想定顧客層
  • 顧客のニーズ
  • 業務管理



などについえリサーチをかけていると思います。
本書では具体的に「これこれの準備をした」ということは、明確に書かれていません。
しかしそれらのことが行われていることが分かる書きっぷりです。









2013年4月15日月曜日

デフレーション "日本の慢性病"の全貌を解明する

デフレーション対策→付加価値の創出







管理人はふだんおちゃらけミクロ経済学のネタ書きのために、
ミクロ経済学の教科書しか読んでません。マクロ経済学は、
クルーグマンマクロ経済学スティグリッツマクロ経済学 第3版 のテキストを通読した程度です。



従って、本書を読んでどうのこうのと批評するほどの知見は、
持ち合わせていませんので、要点だけまとめておきます。






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デフレーションとは何か?



  • デフレーションの定義(P198)

一般的な物価水準の下落。多くのモノや価格がそろって下落すること。



  • デフレーションの何が問題か?(P8)

実質金利の上昇による設備投資や住宅投資の伸び悩み(実質金利=名目金利-インフレ率)。



  • デフレーションの処方箋(P211)

新しいモノやサービスを生み出す需要創出型のプロダクトイノベーション




「石ころ」からのイノベーション





吉川先生は、デフレーションを止めるための直接的な対策や、
原因として重要でないものも、列挙されています。



  • マネーサプライ
  • 生産年齢人口の減少
  • プロセス・イノベーション



プロセス・イノベーションとは、円高や国際競争の激化の中で
モノやサービスについて、1円でも安くコストダウンをはかることです。



企業の業績で、売上-原価=粗利益という概念があります。
言い換えれば、プロセスイノベーションとは、左辺の「費用」を下げることであり、
吉川先生が本当の「デフレ対策」とされているのは、
費用の低減とともに、売上もあげ、粗利益を増加させることを指していると思われます。



かつての半導体産業が「ただの石ころ」、を電気信号としての役割を発見し、
電化製品に半導体を組み込んでいったような、
付加価値の創出が、デフレ対策としてもっとも有効であると考えます。
(「ただの石ころ」とはケイ素のことであり、地球上では酸素についで2番目に多く存在する物質)




【関連エントリ】


半導体工場のすべて 設備・材料・プロセスから復活の処方箋まで
そうだ葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生



【参考文献】


J・A・シュムペンター
経済発展の理論―企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究〈上〉 (岩波文庫)







池田和明 利益力の源泉―いかに付加価値を創出するか ダイヤモンド社