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2013年5月19日日曜日

子どもの貧困-日本の不公平を考える その2

「親のための教育訓練」という政策はどうか?



子どもの貧困 ― 日本の不公平を考える


散歩コース作成アプリ(iOS) Sanpo :: 散歩中にたくさんの写真を撮ろう! Enjoy your Sanpo! 






このアプリの開発に関わった、Team Sanpo 椿奈緒子さんは、
サイボウズLiveを使って、オンライン上でサービスの開発を行っていたそうです


産休中でもプロジェクトを進行。多彩なメンバーとサイボウズLive上でiPhoneアプリをリリース。
「産休は私にとって”留学”」――椿奈緒子さんが産休中にプライベートプロジェクトを進めた理由




物理的制約からの解放





要するに椿さんは、アプリの制作にあたって、勤務場所とか、通勤とか、
働くための物理的制約をほとんど受けていません



ということは、子どもの貧困を考える上で、「親が子供に接する時間が増える」ことと
「保育所に預けるための費用が下がる」ことの2つについて、メリットがあると考えられます。




一方、椿さんのようなサービスを、広くさまざまな大人が始めるためのデメリット
何でしょうか?まずITスキルの習得や、それにまつわる一般教養を身につけるための
教育訓練費用(と生活費用)でしょう。他に、家に居ながらにして働くというライフスタイルの、
世間へのPR費用などが考えられます。





Baby Session- Makayla / NickNguyen




1人当たりの所得が伸び悩んでいる!





なぜ、散歩コース作成アプリの例を持ち出したかというと、
本書の中である母子世帯の母親の方で、こんな発言の方がいらっしゃったからです。


"最初は何もないところから始めて、がむしゃらに働くんですよね。でも、そうやってがむしゃらに働いていると、だいたい五年目くらいで身体が壊れてしまうんですよね"

(P136第4章追いつめられる母子世帯の子ども)



がむしゃらに働いて身体を壊すということは、子どもに勉強を教えたり、
相談を受けたりすることもできなくなります。たとえ身体を壊していなかったとしても、
がむしゃらに働くことは、子どもと接する時間は相当、犠牲になっているでしょう。



加えて、たとえがむしゃらに働いても、雇用形態によっては、
働き始めて3年ぐらいで、賃金の上昇は見込めなくなるパターンが多いそうです。



そこで、管理人が思い出したのが、椿さんのような働き方です。
個人によっては、「アプリなんか作れん!」「家に居ながらにして収入を得るなんてありえん」、
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。



しかし、社会全体のレベルに視点を広く持ってみたら、どうでしょう?
費用便益の分析ができ、社会保障政策の課題として、一考に値するかもしれません。


  • 費用→大人のための教育費用、大人が教育を受けている間の子どもの生活費
  • 便益→貧困世帯の1人当たり所得の増加、保育費用の軽減



費用の方が多くついてしまようであれば、仕方がありませんが、
便益の方が多ければGoサインを出してもいいと思います。誰か調べてくれんかな(笑)



【関連エントリ】


子どもの貧困-日本の不公平を考える
Webサービスを始めるためのPHP特集
社会を変えるお金の使い方~投票としての寄付 投資としての寄付




2013年4月12日金曜日

環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態

費用便益の問題に応用できる環境問題






手に取ってみればわかるが、ずっしりとくる本です。
670ページもあり、内容もびっしり詰め込まれています。



地球環境に関する著者の主張を一言で言うと、
「地球環境は思っているほど悪くはないよ。決して十分ではないけど」
といったところでしょう。





Amazon jungle from above / Daveness_98




現在進行中、地球環境のトレンドは・・・





「地球環境は思っているほど悪くはないよ。決して十分ではないけど」
具体例は、第3章以降で、事細かにあげられて言います。



  • 人口
  • 食糧
  • 水資源
  • エネルギー資源
  • 空気
  • 鉱物



これれは国連やWHO(世界保健機関)、IMF(国際通貨基金)などの、
公式な一次データにもとづいて、説明されています。




環境も時間もおカネも「稀少な資源」





何せ長い本です。著書であるビヨン・ロンボルグは、本書を読みやすくするために、
第1章で環境保護論を論じる際の、ダメな議論の特徴を述べています。


  • 「地球環境は悪くなっていっている」という根拠のない確信
  • その確信以外の確信はすべて「悪」という考え方



で、ロンボルグがおススメする議論の仕方は、次のとおりです。



  • 統計と言っても2~3年分だけではなく、数十年・数百年のスパンをもって根拠とする
  • 費用便益の分析を行い、社会全体でプラスになっているどうかを検証する
  • 環境問題だけでなく、政治・教育・貧困などの他分野も視野に入れて費用分析を行う



要するに、経済学でいうところの「稀少性」「トレードオフ」の考え方に基づいて、
議論してくださいね、ということです。確かに地球環境も「稀少な資源」には
違いありませんが、人間の時間やおカネもまた「稀少な資源」です。



2つの「稀少な資源」の費用対効果を考えましょうというのが、本書の主旨です。
第1章だけでも読んでおくことをおすすめします。この考え方は、日常生活でも
きっと使えるはず。訳者の山形浩生さんが、好きそうなネタですなぁ~。




【関連エントリ】


訳者解説 新教養主義宣言リターンズ