付加部分も恐ろしいが、本体部分も恐ろしい年金の問題
おそらく本書が想定している読者層は、
- 企業の経営者
- 企業の財務・経理担当者
- 年金基金の幹部(理事とか理事長)
などでしょう。おそらく現場で活躍されている
営業や販売の人にとっては馴染みのない専門用語のオンパレードでしょう。
しかし、現場の人に馴染みがないからといって、「関係がない」というわけではありません。
老後の所得保障をうたっている年金基金を解散するために、
支払う負担金が支払え切れなくて倒産したということになると、
現場の人に「関係がない」ということにはならないでしょう。
厚年基金の「代行」問題がメインですが…
もうちょっと具体的に言うと、厚生年金基金制度に加入している企業が、
国に代わって資産の預かり、運用を行っている「代行部分」が、
危機的状況にあり、それをどうするのか?というのが本書の主旨です。
企業年金連合会 年金のしくみ・手続き
厚生年金保険本体だけでも830兆円の過去債務!
このように書くと、「ウチの会社は厚生年金基金に加入してないからセーフ」と
思われるかもしれません。しかし本書をの読んでいると、その母体となっている、
厚生年金保険がかなりヤバい状態にあることが分かります。
"日本の厚生年金は、1942年(昭和17年)に軍需工場の男性労働者から保険料を徴収した労働者年金保険から始まった。この時点での財政方式は完全な積立方式であり、現在のような賦課方式ではなかった。しかし、政府はこの積立方式だった年金制度の中に「戦費調達」という目的を隠していた"
(P70)
→ということは、日本の年金制度っていうのは、老齢・障害・死亡などの所得が
獲得できないときにできた制度ではなくて、その時々の国策遂行のために,
はじまったってことですか。野口悠紀雄先生の本(リンク)にも書いてたな。
"平成21年度末の時点で国庫負担金を含む積立金(財源)は330兆円あるが、これは給付に必要な額(給付債務)830兆円の約40%でしかないことになる。つまり、「積立不足」が約60%に上る状態だ。"
(P79)
→おいおい、すでに過去に支払いを約束している分だけで、
500兆円も引き当て不足ですか…。国民年金も引き当て不足が発生していますが、
「たったの50兆円」なんで、厚生年金との比較の限りでは、
国民年金は「おトクな年金保険」ということになるんでしょうか?
厚生労働省からの資料だけでは、分からなかったんですけど、
本書を読めば、数値がグラフで明快に示されていて、分かりやすかったです。
厚生労働省
国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し ー 平成21年財政検証結果 ー
【関連エントリ】
1940年体制 さらば戦時経済増補版
戦前昭和の国家構想
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