「草ベンチャー」の経済学
前回は、便利さのあまり、思わず「草ベンチャー」の話をしてしまいました。
本来、この本を読みたくなった理由は、「草ベンチャー」のすすめの方ではありません。
南壮一郎さんが立ち上げたビズリーチは、web上の求職者課金型の転職サイトです。
なのに、最初期には、
- プログラマはいない
- SE(システムエンジニア)もいない
- メンバー2人はプログラミング経験なし
- 十分な金もなし
この状況で、どうやってサービスを始める気ですか?
読みながら、ツッコミを入れてしまいましたが、本書のタイトルを見れば、
南さんが、その困難をどのように克服したか、おおよその想像は、できるでしょう。
牧草うまうま♥ / matsubokkuri
社長はシステム開発から「撤退」
一般的に、会社として必要な業務には、システム開発だけではなく、
営業や広報、マーケティングなど、その他もろもろがあります。
ただ、個人的にはwordpressをダウンロードしながら、
ブログじゃないCMS(コンテンツマネジメントシステム)を構築している身としては、
「システム開発未経験者2人がどうやってサービスを始めるんだろうか?」
と、他の業務以上に気になります。
そういう視線で本書を繰り返し読むと、ハタと目が留まる箇所があります。
”「昨日テストチームが見つけたバグリストは100個ぐらいあったけど、その進捗は?」
「もう90%ぐらい終わってるよ。残りは優先順位が低いから後回しだって」
「前はバグを10個つぶすだけで1日が終わっていたのに…まるで夢のようだ」”
(P193 第7章仲間がチームになった真夜中の「ビズリーチ・タイム」)
このころ、頼れるシステム開発者に、「草ベンチャー」入りをしてもらっています。
また、仲間の進言により、南さん自身はシステム開発の仕事については、
手を引かされています。
「限界収穫逓減の法則」と「分業の利益」
ところで、この引用に関わる事例って、あの有名な人月の神話でも語られていた、
「限界収穫逓減の法則」の典型例じゃないですか?
(業界筋では有名であろう)この本では、
ある開発プロジェクトを担当するプログラマーの人数を増やしても、
それに比例してプログラム開発時間が、短縮されるわけではない、と指摘されています。
「限界収穫逓減の法則」というのは、ミクロ経済学の重要概念の1つです。
この人月の神話でもっと厄介なのは、ある点を超えてプログラマーを追加することは
コードを追加するどころか、かえって「反生産的」になることを指摘している点です。
この本をよーく読んでいると、ミクロ経済学の重要概念の典型例と見られる事象があります。
特化による「分業の利益」とか。クルーグマン ミクロ経済学と並行して読むと、
よりいっそう面白いかもしれません。
【関連エントリ】
Eric Sink on the Businness of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方
ともに戦える仲間のつくり方
人月の神話~狼人間を撃つ銀の弾はない
【参考文献】
ポール・クルーグマン クルーグマン ミクロ経済学 東洋経済新報社
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