「政府の介入は必要悪」
この本を読んでいると、著者のミルトン・フリードマンは、フリードリヒ・ハイエクと
お友達なんじゃないかなぁ、と思ってしまいます。彼らは、いわゆる「自由主義」の
考え方をする人たちです。
「第12章 貧困対策」のP352からP353で書かれている、「自由主義」と「平等主義」の
定義において、彼らの考え方が、はっきり分かります。
【自由主義】
"自由主義では、各自が自分の考えに従ってその能力と機会を最大限に生かす自由を尊重し、このとき、他人が同じことをする自由を阻害しないことだけを条件とする。この点では平等を、ある点では不平等を支持することを意味する。"
【平等主義】
"だが、平等主義者はさらに一歩踏み出そうとする。彼らが「誰かから取り上げて別の誰かにあげる」ことを認めるのは、目標を達成するための効率的な手段だからではなく、「正義」だからなのだ。"
Berlin wall memorial / ingo.ronner
自由主義の政治思想
この自由主義の考え方にもとづいて、
- 国際金融
- 国際貿易
- 国内産業
- 教育
- 職業免許
- 社会資本整備
- 医療制度
- 老齢年金
など、今の日本でも主要課題となる各種政策の「あるべき姿」が、述べられています。
それぞれを貫く基本思想は、「政府の介入は最小限に」です。
やむをえず、政府が介入する場合には、その関与をいかに少なくするか、
ということに焦点が絞られています。
フリードマンは、「正義」というものは、人間の恣意性によって歪められ、
かえって、社会全体のコストを押し上げてしまうことを憂慮しています
ベーシック・インカム?究極の貧困対策
この文章を読んでいると、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスを思い出します。
自叙伝である、ワンクリックで、オンライン書店の立ち上げの下りを読んでいると、
こんな見出しが出てきます。
- 「人間の介入は必要悪である」
つまるところ、一国の政策もweb上の書店運営も、根本思想は同じなのでしょう。
人間がこねくり回して考えるのではなく、システマチックに決めてしまえば
人間の恣意的判断よりも、資源の分配が効率的に行われると、
フリードマンもベゾスも考えているのでしょう。
その最たる例が、「第12章貧困対策」で登場する、「負の所得税」です。
ベーシック・インカムと似たような考え方です。
フリードマンは、自由主義者だからだといって、貧困者を放置しておけば良いとは
全く考えてません。貧困対策は、「数少ない」政府直轄事業の1つである、と主張します(P348)
ただし、その予算は「貧困者に直接現金給付」をするのであって、
特定の集団、組合、年齢層や産業の人たちに向けてはならないとします。従って、
- 農産物買取価格保証制度
- 老齢年金制度
- 最低賃金法
- 労働組合に関する有利な法律
- 関税
- 職業免許制度
などの制度は、「失格か落第」というかなり手厳しい判定をしています。
【関連エントリ】
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フリードリヒ・ハイエク
やさしいベーシックインカム
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