限界収穫逓減の法則についてのお話
本書は、兄弟ブログのおちゃらけミクロ経済学のネタ本として、
使わせてもらいました。(限界収穫逓減の法則その1)
著者のフレデリック・P・ブルックス,Jrは、かつてコンピュータビジネスで、
隆盛を極めたIBM社の、開発マネージャーを務めていた人物です。
そのブルックス,Jrによると、
ソフトウェアを動かすための命令文の増加数と、
それにかかる労力は、単純な1次関数の関係にあるわけではない、と説明されています。
著者のブルックス,Jrが紹介した、ある研究者によると、
労力と命令文の数の関係は、2次関数の関係にあるそうです。
労力 = 定数 * (命令文の数)^1.5
つまり、上の数式は、大規模なソフトウェア開発になればなるほど、
労力は、累乗的に必要となることを表しています。
ここから、単に労力を足し合わせていっても、
一人当たりが作成できる命令文は、徐々に低下するという、
ソフトウェア業界における、限界収穫逓減の法則を、示しています。
プロジェクトが大規模になるほど、一人ひとりの分担作業も複雑化し、
プログラミングコードよりも、プロジェクト内のコミュニケーションに、
時間が割かれるために発生する現象です。
この限界収穫逓減の法則に従うと、
大規模プロジェクトにおける「一人当たりのプログラムコード量」は、
プラスからマイナスに転じるという、悲惨なことも起こりえます。
ブルースクリーン - Blue Screen of Windows on MacPro // 2010.07.07 / Tamago Moffle
そのため、著者のブルックス,Jrは、以下のような解決策を示しています。
- プログラミングの生産性は適切な高水準言語が使用された場合五倍も向上する可能性がある(P82)
- (最初のシステムの)一つは捨石にするつもりでいなければならない(P107)
1つ目は、技術革新の有効性について、
2つ目は、小さく始めて小さく失敗することの有用性が、提案されています。
本書の原書は1975年に発表されましたが、この発想は、2012年に出版された
リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
と同じだと思います。
それだけに本書を読む効用は、ソフトウェア業界の方だけにとどまらず、
様々な業界の人にも存在すると言えます。
【関連エントリ】
ともに戦える「仲間」のつくり方 その2
【参考文献】
エリック・リース リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
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