どの世代にとっても「受けが悪い」本
まず、下の表をご覧ください。国税庁が「平成23年 民間給与実態統計調査結果]で、
発表している、サラリーマンの平均年収の推移です。
サラリーマンの給与は、平成9年の467万円をピークとして下落傾向にあります。
直近で計測した、平成23年には409万円であり、計測対象期間で2番目に
低い数値になっています。
年収ラボ~サラリーマンの平均年収の推移をグラフでご紹介
高年齢層には「1%の賃下げ」 、若年層には「叱咤激励」
そういう背景の中で、タイトルにある「1%の賃下げ」は厳しいと思います。
下がる一方のサラリーマンの年収の、どこを「賃下げする」のかといえば、
著者の見解は、次の通りです。
"現在、もっとも高賃金の45~55歳正社員が、年間受け取る給与総額は約45兆円にのぼる。そのうちたった1%、4,500億円を非正規雇用側に分配することで、10万人の雇用を維持することも可能となるのだ"
(P5 「はじめに」)
といって、著者は、若年層を一方的に擁護しているのかといえば、そうでもありません。
"たとえば筆者の周囲には、書籍はもちろん、新聞もほとんど読まないという人間が割と多い。ハナからその気がないならともかく、本人たちは大企業の正社員で、中には最先発で幹部抜擢された人間もいるほどだ。聞けば彼らが知識を求めないのは「今は必要ないから」だという。現にそれがなくても、立派に業務をこなし評価もされているはないか、と。"
(P80 第2章 「生き残る21世紀人材像」)
「現にそれがなくても、立派に業務をこなし評価もされているはないか」という若年層の
考え方に対して、大手企業での人事制度に携わった経験をもとに、
著者はそれでは通用しないと指摘します。
かつて、中国大使を務めたことがある、丹羽宇一郎さんの発言を引いて、
それなりの待遇を受けたければ、「10年単位での知識と教養の蓄積」が必要であると、
説いてます(P81)。
管理人はこの「10年単位での知識と教養の蓄積」というのが、
本書のキーワードであると感じています。
給料と1人当たりのGDPの相関性
個人的な見解ですが、冒頭であげた給与の下落は、1人当たりのGDPの「伸びの鈍化」と、
何か相関があるような気がします(特に、「権威筋」からの引用があるわけではないが…)。
1980年から2011年まで、約30年間の1人あたりのGDP推移を、
世界(橙色)・日本(青色)・韓国(赤色)で比較した場合、次のようになります。
Google Public Data 世界銀行 世界開発指標
1997年ごろには約1万ドルの差があった、日本と韓国の差が、
直近では約2,500ドルの差にまで縮まってきています。
韓国と対比することによって、日本の1人当たりの生産性について、
ここ数年、「伸びが鈍化」していることが、よく分かります。
「10年単位での知識と教養の蓄積」を、欠いてしまっているような気がしてなりません。
ちなみに、2017年には、1人あたりのGDPについて日韓は逆転すると聞いています。
【関連エントリ】では、その詳細について述べられています。
1人あたりのGDPが、日韓で逆転したところで、「それで何?」と言われるかもしれません。
管理人自身も、そのことで何がどうなるか、具体的に説明できません。
しかし、1人あたりのGDPが交差する過程で、何かいろいろと有形・無形の
「不都合」が生じてくるのではないか?と思ったりします。
大企業の本社や研究所が、東京からソウルに移って、それらの企業による雇用はもちろん、
そのまわりで取引する、さらに小さな企業の売上減とか税収減とか…。
【関連エントリ】
日本成長戦略40歳定年制 経済と雇用の心配がなくなる日
今週の週刊東洋経済 2012年12月15日号
【参考文献】
僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)
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