半導体産業をみて思うこと
本書の著者である佐野昌さんは、東京大学理学部物理学科を卒業され、
日立製作所やルネサスエレクロニクスの半導体部門で勤務されています。
タイトル通り、半導体産業の衰退の現状や対策について、
技術的根拠にもとづき、詳しく述べられています。
管理人は特に半導体の知識が、あるわけではありません。
従ってタイトルにある、「半導体衰退の原因と生き残りの鍵」がどこにあるのか、
「第7章 まとめ」の章から読んでみることにしました。
第7章では、次の3つの提案がなされています。
これらの提案を読んでいると、半導体とは直接関係ないような本が、色々と頭に浮かびます。
突き詰めると、半導体産業に固有の問題ではないように感じるからです。
- 専業化
- モジュラー型産業構造への転換、分業の推進
- 標準インターフェースの、標準規格の取り込み
RAM / James Bowe
専業化→「国富論」
国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上) は、
経済学の父と言われるアダム・スミスの著作。
経済の発達の過程で、分業(専業)による、「特化の利益」を説いていたことが思いだされます。
管理人が運営している、おちゃらけミクロ経済学でも、
比較優位の概念と合わせて、「特化の利益」について、書いたことがありますもんで・・・。
モジュラー型産業構造への転換、分業の推進→「失敗の本質」
産業構造の転換と推進を図ろうと思えば、
システムの蓄積、システムの構築力が必要となるらしい。
太平洋戦争の戦訓から日本人組織の問題点を明らかにしようとした、
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 でも、旧日本軍の組織において、
同じようなことを問題としています。
局所的な戦闘を実行する、下士官・兵は大変強かったらしい。
しかし、戦略を実行する士官の発想がアメリカ軍と比べて、まるでなっていなかった、
と指摘しているところを思いだしました。組織の考え方として、
旧日本軍と半導体産業の姿がだぶる…。
標準インターフェースの、標準規格の取り込み→「新教養主義宣言」
半導体では、「売れる仕様を決定する力をつけよ!」(P219)と説かれ、
新教養主義宣言 (河出文庫) では、「問題はどうやってその日本流を分からせるか」、
と説かれています。
要するに問題点は、「日本ローカル」か「グローバル化」ということではなく、
こちらの意図をあちらさんに、どうやって分かってもらうかということ。
結局は知識のタコ壺化が危ない
結局のところは、世の中のありとあらゆる知見を生かされることが、
必要なんだなと感じます、「文系だから」「理系だから」「専門外だから」ということではなく。
最後まで飛び飛びの文章になっていましたが、最後に関連してそうな本を挙げるとすれば、
エニグマ・コード―史上最大の暗号戦 (INSIDE HISTORIES)でしょうか?
解読不可能と言われた暗号について解読するための「集合知」が、生かされていますので。
【関連エントリ】
過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか?
おちゃらけミクロ経済学 比較優位と取引利益
0 件のコメント:
コメントを投稿