決して過去の出来事ではない現代史
池上彰先生のプロフィールを見ると、「1973年にNHKに入局しから、2005年までの32年間、
記者として事件や災害、消費者問題を担当する」、とあります。
なるほど、NHKの記者を経験されているだけあって、本書を読むと事実に対して非常に忠実です。
人名・地名・年代など固有名詞が、ふんだんにでてきます。
好奇心旺盛で何でもすぐに覚えられる、子どもの方にとっては、
オススメしたくなるような、現代史の教科書だと思います。
しかし、あまりに事実だけを述べられると、新聞の「ベタ記事」を読んでいる感じがして、
読み物としての「おもしろみ」に欠けることがあります。
文章には出てこない池上先生のメッセージ
文章自体は、突っ込みどころがないぐらい事実に固められていて、
すでに固有名詞を暗記しにくくなっている、管理人の頭では、読みづらかったところもあります。
ですが、本書の構成を読み返していると、直接的に言及はされていないものの、
池上先生のお考えが、暗に反映されているように思えます。
Cold War Era World Map (in persian) / torkhum
池上先生のメッセージはココ!
現代史として、世界各国の様々な国が登場しますが、このうち社会主義体制下での、
ソビエト連邦について述べている章が、2章もあります。
- 第4章 ソ連国内で信じられないことが スターリン批判
- 第12章 「ソ連」という国がなくなった
ちなみに中国の人民公社やカンボジアの原始共産制度についても、
別の章で取り上げられています。「社会主義体制下の経済運営と現代史」
という視点で見ると、全18章中4章も、紙幅が割かれていることになります。
NHKの記者というと「中立性」というイメージが思い浮かぶかもしれません。
それだけに、この構成はある意味「偏向的」なのかもしれません。
ですが、あえてこのような構成を取って出版するということは、池上先生に
現在の国内に対する「危機感」があるように感じます。
ソ連や中国、カンボジアでかつて起こったことは、決して「他山の石」ではないと。
【関連エントリ】
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