「今回は違うシンドローム」について
今、高等学校で行われている日本史の授業は、どの時代から始まっているのか知りません。
管理人(1970年代半ば生れ)の場合、今の長野県あたりに生息した
「ナウマン象」から、日本史は始まったような気がします。
しかし、そこからはじめると、日本史は、近代で終わってしまうことになります。
管理人にとっての日本史は、日露戦争と、その後の「日比谷焼打ち事件」あたりで止まっています。
それ以降の現代への歴史認識(高度成長期ぐらいまで)は、
20~30代半ばまで、全くもって無知の状態でした。
仕方がないので、「けっこういい年」になってから、自分で本を探して読んだりしてます。
そのせいか、文部科学省お墨付きである、検定教科書寄りの歴史観を身につけているか
どうかは、極めて怪しいかと(笑)。
USdollar/アメリカドル / amo_designare
現代史のおさらいとしてどうぞ
そういうわけで、第1次世界大戦や関東大震災以降の知識は、さっぱり空白だったのですが、
- 1930年前後の世界恐慌や昭和恐慌
- 太平洋戦争のための統制経済
- 戦後のハイパーインフレーション
には、前々から気になっていました。
一応、教科書にも言及はされているし、今、自分が住んでいる世界と、
非常に近い気がしたからです(縄文時代のナウマン象や、弥生時代の石包丁よりは)
本書では巻末資料として、世界各国の銀行危機の概要が、掲載されています。
この中でご多分にもれず、日本で起こった銀行危機についても、しっかり掲載されています。
明治維新から現代まで、6回の銀行危機について、具体的かつ簡潔に触れられています。
1930年前後の昭和恐慌についても、述べられていますので、
大学受験で日本史の科目を取られる受験生の方は、そこだけでも目を通しておくと、
いいじゃないかなぁ。
あと戦後のハイパーインフレーションの状況を簡潔に知りたい方は、
P186の「第7章国内債務とデフォルトに関する標準的な項目」のところで、まとめられています。
常にそこにある金融危機
管理人は、冒頭に日本史のことを述べてきたように、本書は、過去の歴史のことのみを
述べているのかと言うと、そうではありません。本書のキーワードは、これからも起こりうる
「今回は違うシンドローム」です。
本書は、経験値のUPや金融工学の発達、規制の整備など、
「それは過去の遺物だ。もう○○○のようなことは起こらない」という気持ちに、
警告を発しています。
P413の「第17章危機の早期警戒システム、卒業、政策対応、人間の弱点をめぐる考察」で、
本書の要約に加えて、いつでも起こりうる金融危機の兆候が、示されています。
あと、管理人が個人的にあり得るかもと思ったのは、以下の引用文にある「預金封鎖」です。
直接的には、1970年代のインドで起こったことを述べているのですが、
対GDPの公的債務比率が今よりも少なかった戦後の日本でも、
同じようなことを起こしているのではないかと、感じたからです。
"政府は国民に銀行への預金を強要し、他の選択肢をほとんど、あるいは全く与えない。次に預金準備率などの手段を使い、銀行に対する政府の債務を膨らませる。こうして政府が債務の一部をきわめて低い金利で調達できる状況が作りだされる。このように、金融抑圧は一種の徴税手段となっている。国民は、他に安全な貯蓄手段をほとんど持たないため、やむなく銀行に預金する。そこで政府は、その資金の政府の貸し出しを銀行に強制する規則や規制案を成立させ、公的債務に充当する"
(P225 第10章銀行危機)
【参考文献】
池上彰 そうだったのか! 現代史 (そうだったのか! シリーズ) (集英社文庫)
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