日常生活で活躍するオークション
映画・「男はつらいよ」シリーズで、寅さんこと、車寅次郎が、縁日の出し物として、
「バナナの叩き売り」をしているシーンがあります。
寅さんの口上にのせられた見物人は、最初につけられたバナナの価格を、
どんどん下げていきます。そして十分に下がったところで、寅さんが周りを見回して、
ストップをかけます。その時点で、バナナの価格はその最も低い価格で落札されます。
邦画が好きな人にとっては、おなじみのシーンですが、このシーンをミクロ経済学風に説明すると、
寅さんは、「オランダ型」と言われるオークションを行っている、ということになります。
バナナのたたき売り / iyoupapa
バーゲンセールにみるオークション
このオランダ型オークションには、次の2つの特徴があります。
- 主催者は非常に高い付け値からスタートし、ある買い手がストップと言うまで付け値を下げる
- ストップと言った入札者がその時点での付け値を落札する
冒頭で紹介した、オランダ型オークションには、「バナナの叩き売り」以外にも、
百貨店やスーパーで見られる、衣料品のバーゲンセールがあげられます。
いわゆる、冬と夏の「クリアランス」の前には、衣料品は色・サイズとも豊富にそろっていて
定価販売がされています。しかし、クリアランスに入り、時間が経過するにつれ、
1割引き、2割引、3割引きと価格が、引き下げられていきます。
このとき色やサイズは必ずしも自分の欲しいものが残っていません。
この状況は、一種のオランダ型オークションと考えることができます。
ちなみに、価格を下げるのではなく、
価格を競り上げていくオークションのことを、英国型オークションと言います。
オークションの事例が豊富
実は、この本を読む前にもオークション理論に関する本を読みました。
ですが、その本は理論の証明に紙幅がさかれているため、
管理人にとって見慣れない数式が多く、なかなかオークション理論について、
理解が進まず、難儀していました。
そんなとき、本書の存在を知り、読み進めていると、
オークション理論について数式だけでなく、日常で使われている具体例
と合わせて説明されているので、非常に興味深く、読み進めることができました。
冒頭であげた寅さんの「バナナの叩き売り」の例は、管理人が独自に考えましたが、
衣料品のバーゲンセールの例は、本書から引用しました(P81)。その他にも、
- チキンゲーム→崖に向かって走っているときにどちらが先にストップするか?
- シグナリング→大学に進学する理由
- セントペテルブルクスの逆説→期待値が無限大でも「フツー」の人は賭けに参加しない
これらは、日常的に起こりうる事象で、数式でどういう結果になるか、説明できます。
ですが、本書ではその数式を飛ばしても、どんな結果になるか、丁寧に説明されています。
数学嫌いの人でも読めるような構成になっていますが、オークション理論について理解を
深めたい人は、積分についての予備知識を学習しておくことをおすすめします。
【関連エントリ】
初心者が学ぶゲーム理論
eBayオークション戦略 究極のインターネットオークション戦略
【参考文献】
畑村洋太郎 直観でわかる微分積分 岩波書店
坂井豊貴 マーケットデザイン入門―オークションとマッチングの経済学 ミネルヴァ書房
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