2013年1月4日金曜日

軋む社会 教育・仕事・若者の現在


官僚制と人間の労働力の関係



軋む社会 教育・仕事・若者の現在



あるとき、何かのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のタイムラインを眺めてたら、
普段見慣れない漢字を使ったタイトルと、荒廃した建物の内部を使ったカバーが目について、
読むことにしました。



以前、階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ
という本を紹介しましたが、主張について、一部重なっているところがあることが分かりました。


"このようなメリトクラシーにおいて計測される能力は、認知的で標準的な記号操作能力(文字や数字、法則などを正確に適用し、操る能力)を主としていた。なぜなら行政機関や企業など、近代社会を構成する主要な組織においては、整備された指揮命令系統やルールそしてマニュアルに沿って行為する官僚制の原理が支配的であり、そのような組織においては、そのような組織においては、この種の能力がもっとも有効的であったからである"

※メリトクラシー
=社会内での処遇を、生まれつきの身分ではなく、過去に個人が行った業績に基づき、決めること)

(P57Ⅱ超能力主義(ハイパー・メリトクラシー)に抗う)



本書の問題意識は、このような社会のしくみにもとづいて、
「一生懸命」に生きようとしている若者が報われないことについて、述べられています。




官僚制とは?




引用でも使われている「官僚制」について言及すると、賛否両論のいろいろな意見が出てきます。
ですが、その是非はここでは離れて、なぜ人間を束めるための組織として、
「官僚制」が採用された由来を考えてみましょう。



それは、人間の社会が、今と比べものにならないくらい、貧困だったことにあると考えています。
その貧困を克服し、人間が生存をしていくためには、モノ(食べもの、着るもの、住むところ)
を大量に供給しなければなりません。



しかも、モノを必要とする方は、お金をほとんど持っていません。
従って、生産するときには、「安価で安定した供給」が、条件となります。
そして、この「安価で安定した供給」を実現するために、生産要素内で「分業」が行われます。



ただし、資本の蓄積が低い(大量生産するためのロボットや機械がない)状態では、
人間の労働力が、主たる生産要素となります。



実際に、「官僚制」の組織をよく観察すると、その組織自体が大きな意思に見たてらます。
個々の人間は、意思を持たない「部品」です。組織の考えは通っても、人間の考えは通りません。
(もちろん、良し悪しは別問題です)




官僚制の象徴・ピラミッド!

Cairo pyramids, Dec 2008 - 69 / Ed Yourdon


社会の「軋み」とは?




このような「官僚制の社会」では、組織に属する人間が、「専門性」を身につけ、
ある分野に特化すると、さらに生産量が拡大します。経済学でいうところの「分業」の効用です。
すると、組織は「専門性」「分業」にインセンティブを持ち、ますます「官僚制」を発揮します。




しかし、一方で技術革新が進むと、資本(ロボットや機械)が安価になり、
あるとき、人間の労働力が、資本に置き換わります。



つまり「官僚制」の社会で時間が経過すると、「機械である人間」が、
「機械である資本」に代えられてしまいます。
(もちろんどれぐらいで両者が、入れ替わるかは産業の形態や賃金などによる)。



管理人が、「軋む社会」というタイトルから読み取れる問題意識は、
そういった「機械である人間」と、「機械である資本」の役割交代が「社会の軋み(きしみ)」となって、
表れていると考えています。




機械との競争に巻き込まれないためにする方法とは?




ただ、そういった著者の問題意識は、意義深いと考えますが、
その問題意識について、筋の通らない部分(P142)も、いくつかあるように感じます。



ある過剰労働が問題になっている職場での実情から、従業員に「専門性」を身につけさせ、
仕事を定量化しようという部分があります。しかしながら、これは「機械」との競争になり、
最後は、「人間を雇うか機械を使うか」という、生産要素の問題にいきつくと考えます。



もちろん、過剰労働も、失業はイヤです。それではどうすれば良いでしょうか?
「労働」という概念から外れてみることが、ひとつのヒントになると思います。
(「労働が不要」と言っているわけではない)



別の言い方をすれば、元々「官僚制」自体が機械みたいなものなので、人間は張り合わず、
他の組織形態にそって、糧を得るということです。



著者が挙げられたテーマは、すぐには白黒がつけられない、深いテーマだと思っています。
本書を一冊だけを読むより、【関連エントリ】であげた本と合わせて読むと、
個人にとっての最適解が、出てきそうな感じがします。




【関連エントリ】


組織の限界
MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法
「働きかた」の「考えかた」
階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ



【参考文献】


国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)



国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)



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