バイオテクノロジーをDIY(Do It Yourself)!
最近、経済誌などを読んでいると、メイカーズという言葉をよく耳にします。
当ブログでも、先日、MAKERS―21世紀の産業革命が始まるという本の記事をUPしました。
まずはメイカーズの定義について、
週刊 東洋経済 2013年 1/12号で使われていたものを、ご紹介しましょう。
- 定義その1(P45)
"企業の枠を超えたオープンイノベーション、国境を乗り越えるイーコマースなどウェブ(=ビッド)の世界で実現したものを、リアルワールド(アトム)にも応用していく人びと)"
- 定義その2(P45)
"小型3Dプリンタなどのデジタルツールを活用し、ものづくりをする人びと"
これらの定義は、MAKERS―21世紀の産業革命が始まるに登場する人びとの
考え方を体現しています。本書のDIY生物学の世界でも、精神性は全く同じです。
dna database / didbygraham
ウェブのビッドと遺伝子の塩基配列
メイカーズの考え方は、Webの世界では、今や常識の「オープンソース」と同じです。
コンピューターサイエンスの世界では、プログラミング言語、APIなど、誰でも無料で使える
「ツール」があふれています。コンピューターサイエンスの構成要素である、
「ビッド(0と1のデジタル情報)」は、複製が容易であるからです。
この「ビッド」にあたるものが、本書で登場する、DIY生物学の世界では、
「A」・「C」・「T」・「G」の4種類の化学物質で、構成されている生物のDNAです。
DIY生物学におけるメイカーズは、このDNAを、安価に組み替える方法を、日々探しています。
そして、彼らはその成果を世界中に行渡らせ、病気の予兆の発見や毒物検査などに、
役立ててもらおうと考えています。ただし、どなた様にもDIY(Do it Yourself)で。
生物学のDIYってどんな感じなの?
DIY生物学のメイカーズは、DIY製造業でおなじみの3Dプリンタは、
さすがに使われていません(本書のかぎりでは)。ですが、自宅やガレージなど、
お手軽な「研究施設」で実験(研究開発)を行っている風景は、DIY製造業と同じです。
- 最新設備が整った研究所
- 屈強の警備員と最新鋭の警備システム、
- IDカードをぶらさげた白衣のサイエンティスト
とは、まったく無縁の世界で、実験(研究開発)を繰り返しています。
例えば、マサチューセッツ工科大学を卒業し、病気に関わる変異遺伝子の検査を
「誰でも手軽」にできるよう、研究しているケイ・オールさんの様子は、「家庭料理」そのものです。
"まずは、道具一式を組み立てるか、ネットオークションのイーベイ(e-Bay)で買うかした。「通常一万ドルする細胞培養器が、送料込みの90ドルで買えました」。炊飯器とウィスキータンブラーで蒸留水製造装置を組み立てた。「これはハイテク温度制御装置なんです」。飼い猫を安全管理主任にした"
(P25 第1章「シンプルな遺伝子検査」)
自宅でDIY生物学をやっても大丈夫なの?
読んでいると、どうしても「DIY生物学が、犯罪やテロに使われたら?」、
という心配が出てきます。政府機関による、抑止力にも限界はあります。
その懸念について、先ほどの引用で登場したケイ・オールさんは、こう語ります。
"バイオテロをやりたいなら国の生物兵器防衛ラボに職を得る方が簡単だ"
(P25第1章「シンプルな遺伝子検査」)
テロを行うためのコストがいかに合わないかが、P238「第13章バイオテロ」のところで、
述べられています。詳細につきましては、ぜひ本書まで(文系人間の手に負いかねますので(泣))
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MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
【参考文献】
週刊 東洋経済 2013年 1/12号 [雑誌]
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