TPPや著作権についてビジネスよりで分かりやすい解説
本書は、福井健策先生(弁護士・ニューヨーク州弁護士)が、
今話題の、知的財産分野のTPP(環太平洋経済連携協定)問題と、
各国の著作権法問題について、言及された本です。
TPPや日米欧の著作権法の比較に関して、管理人のうすっぺらい知識を
披露しても仕方がないので、まずは、福井先生の文章について述べてみたい思います。
実は、管理人は、福井先生の著作を読むのは2回目です。
まだ当ブログには、感想文を載せていませんが、
先に著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書 527A) 、
という著作を読んだことがあります。
その本を読んだ時も、同じようなことを感じましたが、
福井先生は、著作権法について、非常にビジネスよりに説明されていますので、
- 「知的財産権分野のTPPに参加すると日本のコンテンツ産業はどうなるのか?」
という問題が、法律のシロウトにでも分かるように、綴られています。
もちろん、法律そのものについて、一般人の生活にどのような影響を及ぼすかという
NHKの「生活笑百科」的な視点も、フォローされています。
2010 Taco Time-RonSombilonGallery (91) / RON SOMBILON MEDIA, ART and PHOTOGRAPHY
要はビジネスモデルを変えられるかどうか
- SOPA(オンライン海賊行為防止法)
- ACTA(模倣品海賊版拡散防止条約)
- ミッキーマウス保護法
これらは、知財分野におけるTPP参加において、
キーとなる米国の法律名や、国際的な条約です。
こういった法律や条約そのものに関する説明と、その感想を述べていくだけでも、
ブログ的にはおいしいです(なぜなら、検索ロボットがこれらのキーワードに反応しそうだから)。
ですが読んでいる途中で、福井先生が本文中で
最も主張したいことが、管理人が感じていることと、リンクしているところがあったので、
そこについて、特に述べましょう。
"つまり、コンテンツ産業は典型的な海賊版に加えて、ネット上の膨大「フリー」なコンテンツとの競争を余儀なくされ、それが(新聞・TV・音楽CDなどの既存メディアの)売上の長期縮小傾向につながっているということです"
(P113 第3章「最適の知財バランスを求めて」)
知的財産分野におけるビジネスモデルの比較
この第3章では、主たるコンテンツ産業の売上が、21世紀に入ってから長期低落傾向にある中で、
「ライブイベント・ビジネス」だけが、わずかながら、売上増加傾向にあることが、
紹介されています(P110)
当然、「ライブイベント・ビジネス」は、直接現場に行って楽しむものであり、
文字、画像、音のように、デジタル・コピーの影響を被ることは、あまり考えられません。
むしろ、コピーコストが、ほぼゼロという恩恵を受け、宣伝や広告効果を発揮しています。
一方、新聞・TV・音楽CDなどの既存メディアは、
最初に膨大な固定費用(印刷工場、放送局、アーティストの育成、
著作権による障壁など)をかけて、低い可変費用(紙、DVD、CDなど)で
回収するという、ビジネスモデルです。
(固定費用や可変費用について詳しい説明はこちらまで!)
つまり、既存のメディア産業(とその参加企業で構成される業界団体)にとって、
TPPに参加するかどうかは、そのビジネスモデルによって賛否の立場が変わる、
ということです。
"何が言いたいかといえば、著作権などの知的財産権などに対する態度や正解は、その個人や産業の置かれているビジネス構造、いわば収益モデルに依存するということです"(P113 第3章「最適の知財バランスを求めて」)
ちなみに、農業分野のTPPと知財分野のTPPをと対比すると、
非常に興味深い構図が見えてきそうなので、次回に引き続き、TPP関連の本を取り上げてみます。
(つづく)
【関連エントリ】
コモンズ ネット上の所有権強化は技術革新を殺す
ネット帝国主義と日本の敗北 搾取されるカネと文化
TPPで日本は世界一の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代
おちゃらけミクロ経済学 利潤最大化と費用その3
【参考文献】
福井健策 著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書 527A)
クリス・アンダーソン フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 NHK出版
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