2012年12月30日日曜日

年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その4

「積立金不足」をうめるのは「未来への期待感」







鈴木亘先生の、「年金問題は解決できる!」の感想文も、今回が最終回です。
前回のブログでは、公的年金制度において、すでに生じている、
「750兆円の積立金不足」の補填方法について、述べました。

 

鈴木先生は、まず「相続税の徴収強化」をあげられています。
次に、2番目の方法として、「積立方式年金事業団債」を発行する方法も、紹介されています。




赤ちゃん

おはようとらちゃん / yto




事業の黒字を担保に資金調達




前回のブログで紹介した「積立方式年金事業団」は、
将来に向かって新しく年金の積立を行う組織です。



当然、最初のうちは収入大で、支出ゼロの事業なので、事業は黒字になります。
その黒字と、将来の所得税を担保にして、債券市場から資金調達をします。



そして、そこで調達された資金をもって積立金の補填を行い、
現在、年金を受け取る方にお金を配分します。



ただ、この方法に関する見方は、2つに分かれると個人的に考えています。


  • 肯定的な見方→「世間はオレ達を信じてしてカネを託してくれる!」
  • 否定的な見方→「結局は借金かよ!?」



資産と負債は表裏一体の関係





もっとも、現行の公的年金制度をそのまま続けるにせよ、
鈴木先生が提案される、「積立方式年金事業団」「年金清算事業団」を導入するにせよ、
「750兆円の積立金不足」という、負債の手当てという問題は、常について回ります。
(つまり、日本に住んでいる限り借金からは、誰も逃げられないということ)



このように「負債」、「負債」と書くと、まるで負債が疫病神のように見えますが、
個人的には、そういう風には考えていません。
社会全体で考えると、「誰かの資産は、誰かの負債」で、両者はワンセットの関係だからです。
(会計の世界で使われている貸借対照表のイメージ)



問題は、「片割れの資産」を持っている人が、「片割れの負債」を持っている人に対して、
「コイツは、負債が返せなくなるじゃないか?」ということを「思い込んでしまう」
ということでしょう。



「負債が返せなくなった」という確定した事実も、もちろん重要ですが、
ここでは、その事実よりも先に、「思い込んでしまう」ということがポイントです。



人はそういう心理状態に陥ると、他人に対して、お金を貸そうとは思わないでしょう。
また社会全体がそう思えば、「積立方式年金事業団債」を、誰も買わないでしょう。
(この心理状態の、逆バージョンがいわゆる「バブル経済」




解決方法は未来への「期待」





逆に、資産側が、負債側に対して、
「コイツにカネを貸しても(出資しても)大丈夫。必ず利子(配当)をつけて返すはずだ!」
と思ってしまえば、人は、他人にお金を貸します。



債券市場や資本市場で、それなりのお金を、それなりの条件で
調達することが、できるでしょう。



今回は、4回シリーズのブログで、公的年金問題について書いてきました。
管理人は、この問題を解決するためには、


  • 『「お金を持っている側」が「お金を持っていない側」に対して、見返りの「期待」を込めて、お金を貸す(出資する)ことができるか?』


つまり、「未来への期待感」をいかに社会全体で醸成するか?ということに尽きる、と考えます。




「ほどほどの期待感」が必要





今回は、たまたまテーマが、「公的年金問題」でしたが、
テーマを「企業」に置き換えても、同じことが言えると思います。



以前、戦後から高度経済成長期において、
「日本のどの部門がおカネを持っていたか?」という指標を見たことがあります。
その指標で、「企業部門」を見ると「資金不足」の状態であったことが分かりました。



それに対して、「家計部門」・「金融部門」などは、「資金超過」の状態にあり、
「企業部門」に対して資金を供給し、「日本全体でほぼチャラ」という印象を受けました。
(あと、「外国部門」とかもあったと思いますが、浅学にして国内部門しか見ていません)。



70年代半ばに生まれた管理人は、「高度経済成長期の日本」と聞くと、
「金持ちの国」というイメージを抱いていましたが、
決してそうではなかったことが、最近ようやく分かってきました。



実は、「企業部門」は成長を担保として、負債(や出資)などで
他部門からカネを回してもらっていたことが、この指標を見て、理解できるようになりました。
(ちなみに、ここ最近の「企業部門」は「資金超過」の状態にあることもついでに分かった)。



もちろん管理人は、「期待」の効用だけを考えるもではありません。
「期待」の先にある、「見返り」「リスク」をどのように測るか?ということも、
同じくらい大切だと考えています(そうでないと「バブル経済」になってしまいますから)。



そのためには、鈴木先生が、本書で述べられたように、
日本全体で「750兆円の積立金不足」という、基本的な事実を明確にされたことは、
大変意義のあることだと考えています。




【関連エントリ】



年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その1
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その2
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その3
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今週の週刊ダイヤモンド2012年12月8日号


【参考文献】


ジェームズ・スロウィッキー 「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)





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