将来問題を考えるときのツールは「複利計算」
前回からの続きです。
前回では、「公的年金の現状」について、簡単な計算式で表しました。
今回のブログでは、「公的年金の将来」についてカンタンな計算式で表しましょう。
現在の公的年金制度は、「世代間の仕送り方式」とも呼ばれ、
その時々の、働ける世代が保険料を支払い、働けない世代がその保険料を
年金として受け取るシステムになっています。
現在働けいて収入を得ている世代も、将来的には、「老齢」や「障害」などを理由として
働けずに収入が途絶えるということが、一定の確率で発生します。
こういった長期的なシステムのため、公的年金制度を考える上では、
「現在」だけでなく「将来」の視点でも、考える必要があります。
ご機嫌とらちゃん / yto
公的年金を理解したい人のためのやさしい計算式 その3
- 現在の年金(給付)(A)= 賃金(B) × 保険料率(C) + 積立金(の取崩し)(D) + 税金(E) ―(2)
前回のブログで登場した計算式です。
「公的年金の将来」について、厚生労働省が
著者がまとめた数値を使うと、以下のような計算式になります。
- 将来の年金(給付)(A)'= (賃金 ×上昇率2.0% × 年数)(B)' × 保険料率(C) + (積立金 × 利回り2.5% ^ 年数)(D)'+ 税金(E)―(3)
- 将来の年金(給付)(A)'
65歳以降世代の増加による給付増
- (賃金 ×上昇率2.0% × 年数)(B)'
2009年の財政検証で厚生労働省が発表した名目金利の長期運用利回りは4.1%(P41)
(運用利回りと賃金の上昇率は一概に比較できないが、複利計算をする上で、乖離が生じる)
- 保険料率(C)
据え置き。同じ。
- 積立金(D)'
2009年の財政検証で厚生労働省が発表した名目金利の長期運用利回りは4.1%(P41)
- 税金(E)
2004年の年金改革で消費税のUPはすでに織り込み済み(P57)
要するに、左辺の年金(給付)は「確実に増加」していくのに対し、
右辺の賃金と積立金の部分は、「加速度的に減少」していくことになります。
特に右辺は、第1項と第2項に、大変な問題を抱えています。
なぜなら、賃金上昇率と積立金の運用利回りが、過去に政府が年金制度を運営するために、
想定している利回りの数値と乖離があるからです。
おそるべき複利効果のパワー
賃金上昇率が政府の想定していた数値と乖離していていることも、十分問題ですが、
積立金の部分が、「加速度的に減少」していくことも、同じくらい重要です。
乖離幅に基づいてを複利計算すると、元利合計が年数分だけ
累乗的に乖離することになるからです。
例えば、管理人が、現在20万円の積立金を持っているとしましょう。
これらを2つの銀行に50年間10万円ずつ、それぞれの利息で預けると、
元利合計は、以下のようになります。
- A銀行→4.1%→745,652円
- B銀行→2.5%→343,711円
わずか1.6%の違いですが、結果として両者は倍以上の差が返されます。
いろいろ複利計算シート
公的年金は100年間にわたって制度設計がなされます。
例で上げた、50年の連続複利計算は、決して大げさなものではありません。
年金給付の引当てとされるている、「原資」は急速に縮小しているのです。
(つづく)
【関連エントリ】
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その1
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その3
年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革その4
2050年の世界 英『エコノミスト』は予測する
今週の週刊ダイヤモンド2012年12月8日号
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