普通解雇がフツーの時代に突入
- 「大学特集」
- 「病院特集」
- 「小売業特集」
- 「スマホ特集」
これらは、「週刊ダイヤモンド」・「週刊東洋経済」・「日経ビジネス」の特集を
毎週眺めていると、(ほぼ)毎年の恒例行事として、回ってくる特集です。
今週は、そんな恒例行事の一つである、「リストラ特集」です。
ただ、今週の本誌は、「特集」の前にニュース記事として、
「巨額赤字パナの危機感 シャープの楽観」という、記事を出していたので、
余計に、「雰囲気」を醸し出していたように思います。
意図的なものを、感じないでもないですが、
同日発売の日経ビジネスでも、同様の記事をやっていました。
たまたま、『季節もの』がめぐってきた、ということにしておきましょう(笑)
(日経ビジネスオンライン出血止まらぬパナ・シャープ)
「解雇」に関する認識にズレ
冒頭で、「恒例行事のひとつ」として、申し上げましたが、
いつもより、「進んだなぁ」と思うことが、一つあります。それは、冒頭の見出しの文章です。
"普通解雇がフツーの時代に突入"
(P38の見出し)
労働者を解雇することについて、労働基準法18条の2によると、
"解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
というかんじに、かなり制限されていました(少なくとも建前上は)。
この法律を読んでも、「何のこっちゃ?」という感じですが、平たく言うと、こう読み換えられます。
●「合理的な理由」 ---->>
懲戒解雇:明らかに就業規則の懲戒事項に抵触した場合の解雇(刑法犯になるなど)
整理解雇:完全に倒産して明らかに全員の雇用継続が無理なときの解雇
●「社会通念上相当であると認められない場合」 ---->>
「裁判所は認めない」と解雇無効の判決を出した場合
つまり、裁判所は、「懲戒」と「整理」以外の理由では、「解雇」を認めませんよ、ということです。
霞ヶ関を散歩ちう。 / cytech
一方で、解雇が、ほぼ認められないことを分かっている、事業主には、
リストラに伴う出向、配置転換などの選択肢が、暗黙のうちに与えられています。
人員削減を迫られる企業は、これらの手段を「フル活用(?)」しながら、
実質上の解雇通知ともいえるような、退職勧奨を行います。
出向、配置転換は、本来、雇用継続を前提としたものなんですが…。
「解雇」について広く知ろう!
このように国の意図(裁判所)と、民間の事業主の間に、「解雇」に関する認識について、
「ズレ」が生じています。
先ほど「進んだなぁ」と思うのは、
「整理解雇の4要件」をすべて満たさなくとも、解雇が認められた判決が出たことです。
"4つすべてを満たしていなくても総合的に考えて必要性が、認められれば解雇は有効"
(P44)
●整理解雇の4要件
- 解雇に踏み切る必要があるほど経営は厳しいか?
- 解雇を回避するためのあらゆる努力をしたか?
- 解雇の対象者を公正に選んだか?
- 社員に十分な説明をしたか?
従来、これらは、「要件」と呼ばれ、超えなければならない「壁」だったそうですが、
この判決が出た後は、「要素」という言葉が使われ、解雇のハードルが、下がったようです。
このことが、冒頭の、「普通解雇への道」に、つながるのではないか?という感じがします。
最後に参考書籍を挙げておきます。社長は労働法をこう使え! では、日本の会社における
解雇についての考え方や、裁判所の対応などが、分かります。
外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々 の主旨は、
外資系金融機関の内部の実態ですが、社員の退職勧奨や、整理解雇を行うときの、
生々しい実態が語られている部分があります。本誌の記事とダブるところがあります。
普通解雇が、将来的に「有効」になるか、「無効」になるかは、分かりませんが、
労働者の解雇について、タブー視せず、広く知識が広まれば、いいと思います。
参考文献:
向井蘭 社長は労働法をこう使え!
藤沢数希 外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々
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