「これからの正義の話をしよう」に近い本
経済学では、売りと買いの取引利益の有効性を、認めているものの、市場はよく「失敗」します。
その「市場の失敗」を正すと期待される政府も、実はよく「失敗」します。
本書で、頻繁に登場する「レントシーキング(割当)」は、
超過利潤を発生させるため、1%に代表される政府及び一部既得権益者と、
99%のふつうの市民との間に、巨大な格差を発生させます。
それでは、何を信じれば良いのか、という話になりますが、
著者のスティグリッツは、市場と政府の他に、「市民社会」という第三の概念を登場させています。
いちのせき市民フェスタ / center-i
そして、富を公平に再配分するために、三者の力が、均衡させることを提唱しています。
それらの「バランス関係」を信じてください、というのが、スティグリッツさんの主張です。
(かつて、魏・呉・蜀の「天下三分の計」を唱えた、諸葛亮孔明みたいですね~)
政治的な立場として考えるならば、「中道左派」というのでしょう。
おそらく、これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学 で、
有名なハーバード大学のマイケル・サンデル教授と、考え方が似ていると思います。
本書は、経済学の中でも「規範経済学」というジャンルに属し、
文章中でも、「経済学とはかくあるべし」という雰囲気が漂ってきます。
(「規範経済学」は、計量経済学などとは、違う意味でとても難しいジャンルだと思います)
もし、中立的な思考様式を身につけたいと思う人は、
ロン・ポールの他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ ―リバータリアン政治宣言― を読んで、
頭の中を中和させてください。ロン・ポールは、いわゆる「右派」だと思います。
本書とは、対称的な考え方をしています。
個別の内容で、気に入ったのは、「積極的労働政策」(P401)という点です。
労働政策といっても、ここでは、失業給付の期間延長や、
雇用継続のための企業助成金については、ひと言も触れていません。
"教育と技術に莫大な投資を行う必要がある"
ということだそうです。これは、政治的な立場と言うよりも、お国柄というところでしょうか(笑)
ちなみに「レントシーキング」について詳しく知りたい方は、コチラまで。
貿易における輸入割当も、「レントシーキング」の一種です。
参考文献:
マイケル・サンデル これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
ロン・ポール 他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ ―リバータリアン政治宣言―
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